2021/02/04

監視報告 No.29

 監視報告 No.29  2021年2月4日


§ 21団体が日本政府に要請--核兵器禁止条約が発効した今こそ、「核の傘」政策からの脱却に向け「北東アジア非核兵器地帯」構想の真剣な検討を

本監視プロジェクトのイニシャチブで、日本の市民団体21団体が、202122日、要請書を日本政府に提出した。要請書の提出と説明は外務省を窓口としてオンラインで行われた。また、これまでの監視報告をテーマ別に分類してまとめた冊子「監視報告集 2018.112021.1が、同時に日本政府に提出された。冊子は以下のURLで読むことが出来る。

http://www.peacedepot.org/wp-content/uploads/2021/02/NEA-NWFZ-watch-reports.pdf

要請書と要請団体は以下の通りである。

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内閣総理大臣 菅義偉様

外務大臣  茂木敏充様

 

日本の核兵器政策に関する要請書

核兵器禁止条約が発効した今こそ、「核の傘」政策からの脱却に向け「北東アジア非核兵器地帯」構想の真剣な検討を求める

 

 世界の感染者が1億人を超えたコロナ禍は、核兵器をはじめとする軍事力が「人間の安全保障」に全く役に立たないことを浮き彫りにしています。人間の安全を保障するには、核兵器を含む巨額の軍事予算を削減し、その分を市民の生命と安全を守る様々な予算にまわすことが必要です。

 そうした中で、2021122日、被爆者をはじめ世界の市民の念願であった核兵器禁止条約(以下、TPNW)が発効しました。核兵器は、言うまでもなく、わずか一発で無差別大量殺戮が可能で、核攻撃の応酬となれば人類を滅亡させかねない兵器です。TPNW発効により、このおぞましい兵器が、国際法上、保有も使用も許されない違法な存在となりました。これにより核兵器の非人道性と違法性の認識が世界に広がることで、今後、締約国以外にも大きな影響を及ぼすでしょう。

ましてや、日本はヒロシマ、ナガサキを経験した「唯一の戦争被爆国」です。にもかかわらず、日本政府はTPNWの意義を認めず、参加を拒否し続けています。一方で、日本政府は一貫して核兵器の非人道性と核兵器廃絶を訴えており、TPNWへの否定的態度との矛盾は、今後、さらに厳しく問われることになるでしょう。

そうした矛盾を解消し、日本がTPNWに参加するには、条約が第1条e項で禁止する「核の傘」政策からの脱却が必要となります。そこで「核の傘」政策からの脱却を可能にする現実的政策である「北東アジア非核兵器地帯」構想を真剣に検討するよう、以下要請します。

 

1.直ちに実施可能な行動

1) 核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべきであるというTPNWへの原則支持の表明を行うこと

日本政府は「核兵器禁止条約が掲げる核兵器廃絶という目標は共有している」と繰り返し表明しています。また国会答弁において外務大臣は「唯一の戦争被爆国として、核の非人道性をどの国よりもよく理解をしている」と述べながら「核兵器禁止条約とは核兵器廃絶へのアプローチが違う」と述べ、TPNWへの参加を否定してきました。この立場からすれば、日本政府はアプローチは違うが、「核兵器は非人道的な兵器なので禁止すべき」というTPNWの基本的な考えには賛同できるはずです。日本政府は、まず「TPNWを原則的に支持します」という分かり易いメッセージを世界の市民に発するべきです。

 

2TPNW締約国会議にオブザーバーとして参加すること

 条約は発効から1年以内に締約国会議を開催することを定めています。日本政府は締約国会議へのオブザーバー参加に慎重であると報じられています。一方で日本政府は核兵器廃絶に向けてTPNW推進派と否定派の「橋渡し」役を果たすと述べていますが、橋渡しをするためには推進派と否定派双方の主張を理解し関係を築くことが必要です。日本がTPNW締約国会議にオブザーバー参加することによって、TPNW推進派とも相互に理解を深めることができます。それは橋渡しをするうえで不可欠な前提となります。

 

2.中長期的な取り組み―「核の傘」政策からの脱却

(1) 北東アジアにおける安全保障環境を悪化させる行動をとらないこと

 日本政府は厳しい安全保障環境を理由に「核の傘」の必要性を訴え、TPNWへの参加を拒否しています。しかし、安全保障環境を厳しくした、あるいは、厳しくしている責任は日本にもあります。日本は、専守防衛政策に反して、敵基地攻撃能力の保有を準備したり、米軍とともに遠く南シナ海に自衛艦を派遣したりして、ことさらに軍事的緊張を高めています。また、2018年に朝鮮半島で始まった歴史的な緊張緩和の好機を定着させる努力をすることなく、国連安保理決議を超える北朝鮮への独自制裁を継続しています。良好な安全保障環境を築くためには、まず、日本が安全保障環境の改善に向けた外交努力を行うことが必要です。

 

(2) 2018年に始まった朝鮮半島の非核化・平和プロセスの行き詰まりを打破するため、米国のバイデン政権に米朝協議の再開を要請すること、そのために、まずシンガポール共同声明の継承をバイデン政権に求めること

20186月、シンガポールでの米朝首脳会談で合意された米朝首脳共同声明は、画期的な合意文書です。そこには長い敵対の歴史を超えて両国が平和と繁栄の新しい米朝関係を築くこと、朝鮮半島に永続的で安定した平和体制を構築すること、という今も必要な基本的な合意が述べられ、そのうえで北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化を行い、米国が安全の保証を与えるという、お互いの約束を表明しています。

米国の新政権が、まずこの米朝首脳共同声明の意義を再確認し、その履行に向けた米朝協議の再開について新しいイニシャチブを発揮することが、北東アジアの非核化と緊張緩和に極めて重要です。日本自身の核兵器依存を軽減する道でもあります。

日本政府がバイデン政権発足の機会に、米新政権に対してこれらの要請を行うことを求めます。

 

(3) 「核の傘」政策からの脱却、そしてTPNW加盟を可能にする「北東アジア非核兵器地帯」構想を真剣に検討すること

 日本政府は、日本が受けている核兵器の脅威に対して、日本自身が核武装しない以上、米国の拡大核抑止力(核の傘)に依存することが必要だとしてきました。しかし、世界の圧倒的多数の国は核武装でも「核の傘」でもなく、非核兵器地帯条約の締結という外交的努力と国際法の力によって核兵器の脅威から身を守ってきました。それらの国々がTPNW推進の大きな原動力になっています。

日本もまた、北東アジア非核兵器地帯を設立する努力をすることによって、「核の傘」依存から脱し、TPNWに加盟することが現実的に可能であると考えます。

日本政府が、2018年の南北板門店宣言と米朝シンガポール共同声明に始まった朝鮮半島非核化プロセスを支持するだけではなく、すでに非核三原則をもつ日本を加えた北東アジア地域全体の非核化を提案すれば、「北東アジア非核兵器地帯」条約への道は大きく前進するでしょう。日本と南北朝鮮の3か国が非核兵器地帯を形成し、米国、中国、ロシアの3か国がこの地帯に核兵器の使用や威嚇しないという安全の保証を約束するものです。検証を伴った「北東アジア非核兵器地帯」条約が実現すれば、「核の傘」は不要となり、日本はTPNWに加盟し、被爆国にふさわしい核兵器廃絶への使命を果たすことができます。

核兵器禁止条約が発効した今こそ、このような「北東アジア非核兵器地帯」構想の検討を強く要請いたします。

以上

202122

NPO法人ピースデポ

朝鮮半島非核化合意履行・監視プロジェクト

アーユス仏教国際協力ネットワーク

核兵器廃絶地球市民集会ナガサキ

核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA

原子力資料情報室(CNIC)

原水爆禁止日本国民会議

世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会

世界連邦運動協会(WFM)

日韓民衆連帯全国ネットワーク

日本カトリック正義と平和協議会

日本キリスト教協議会(NCC)東アジアの和解と平和委員会

日本基督教団神奈川教区寿地区センター

日本反核法律家協会

日本福音ルーテル教会社会委員会

日本YWCA

反核医師の会

ピースボート

ふぇみん婦人民主クラブ

武器取引反対ネットワーク(NAJAT

許すな!憲法改悪・市民連絡会

 

連絡先 NPO法人ピースデポ

223-0062横浜市港北区日吉本町1-30-27-4 1F

電話:045-563-5101 FAX:045-563-9907


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