2020/07/01

監視報告 No.23


 監視報告 No.23  2020年6月30日

§朝鮮戦争が終結すれば、現在の朝鮮国連軍は解散するのが道理である。

20184月、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(DPRK、北朝鮮)は板門店宣言で、朝鮮半島の軍事的緊張を緩和し、非核化を含む恒久的平和体制を確立するために協力し合うことに合意した。さらに米朝も同年6月のシンガポールにおける米朝首脳会談における共同声明において、平和と繁栄のための新しい米朝関係を築き朝鮮半島に永続的で安定した平和体制を建設するという共通目標に合意した。板門店宣言では、休戦状態にある朝鮮戦争の「終戦」を年内に宣言すると合意し、トランプ大統領もシンガポール首脳会談後の記者会見において、「朝鮮戦争はもうすぐ終結する」と述べた。この2018年の2つの歴史的会談をきっかけに、19506月に勃発し、19537月に休戦協定が成立してから今にいたる朝鮮戦争の終結が、改めて具体的な国際的アジェンダとなった。
朝鮮戦争の終結は北東アジアの平和をめぐる環境を好転させる可能性を持つが、そのためには朝鮮国連軍の今後について慎重な合意を形成する必要がある。
朝鮮国連軍は、朝鮮戦争が始まった1950年に国連安保理決議によって創設され、現在も韓国に駐留するが、日本にも後方司令部を置いている。朝鮮戦争の休戦状態が戦争終結宣言や平和協定によって新しい状況に移行すれば、当然にも本来の朝鮮国連軍の任務は終了し、組織は解体される運命にある。一方、戦争終結後の平和維持のために朝鮮国連軍を残そうという議論が、米軍内に生まれている。
本稿では、朝鮮国連軍の誕生の経緯を改めて振り返りながら、朝鮮戦争終結後の朝鮮国連軍が取るべき道について考える。

「国連軍」と「朝鮮国連軍」
1950年に勃発した朝鮮戦争では、朝鮮半島の武力統一を図った北朝鮮による侵攻に対し、韓国軍を「国連軍」の旗を掲げた米軍を主体とする多国籍軍が支援した。この「国連軍」は国連憲章で定められた本来の国連軍とは異なるため、一般的に「朝鮮国連軍」と区別して呼ばれている。まずは、朝鮮国連軍と本来の「国連軍」の違いを明確にしておく。
国連憲章第7章(第39条~51条)は、国際平和を破壊したり、侵略行為があった場合、紛争の抑止や平和回復のための武力行使を認めており、そのための軍隊が国連軍であるとされる。国連憲章第42条は、平和の破壊や侵略行為を止めるために同第41条が定める経済制裁などの非軍事的措置が不十分だと安保理が判断した場合、安全保障理事会は国際の平和及び安全の維持または回復のために軍事行動を行うとしている。そして続く第43条は、「国際の平和及び安全の維持に貢献するため、すべての国際連合加盟国は、安全保障理事会の要請に基きかつ1または2以上の特別協定に従って、国際の平和及び安全の維持に必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させることを約束する」と定めている。つまり、各国連加盟国は安全保障理事会の要請に応じて、自国の軍隊の一部を提供することになっている。こうして各国から提供され、安全保障理事会に指揮される軍隊が、本来の国連軍である。
しかし、正式な国連軍はこれまで一度も存在したことがない。国連軍を構成するための各国の軍隊の提供は、第43条で言及された「特別協定」に従って行われる。この特別協定は1946年から安保理の助言機関である軍事参謀委員会(常任理事国の参謀総長またはその代理で構成)で構想が検討された。だが米国とソ連をはじめ各国の意見が一致せず、1948年に検討打ち切りとなった。したがって安全保障理事会に兵力を提供する特別協定を結んでいる国は存在せず、国連軍が組織されたことは一度もない。
 一方、朝鮮国連軍は、1950年に採択された安保理決議第828384号に基づいて設立された。当時の国連安保理で「中国代表権」を握っていたのは中華民国(台湾政府)であり、代表権をめぐってソ連は安保理をボイコットしていた。決議はそのような不完全な安保理で採択された。以下は、各決議の要点である。

    決議821950625日)[1
 北朝鮮による韓国への武力攻撃は平和の破壊を構成するものであると認定し、敵対行為の即時停止、北朝鮮軍の38度線までの撤退を求め、すべての加盟国に対し、この決議の履行にあたって国連あらゆる援助を与えることを求める。
    決議831950627日)[2
 北朝鮮の武力攻撃を撃退し、朝鮮における国際の平和と安全を回復するために必要と思われる援助を韓国に与えるよう、加盟国に勧告する。
    決議84195077日)[3
 加盟国によって提供された兵力およびその他の援助を米国指揮下の統一司令部に提供することを勧告し、米国に統一司令官を任命するよう要請する。統一司令部が北朝鮮に対する作戦中に、国連旗を使用することを許可する。

 朝鮮戦争が始まった1950625日、安保理は決議82号により、北朝鮮の行為は平和の破壊であると認定し、北朝鮮軍に撤退を要請した。しかし北朝鮮が従わなかったため、安保理決議83では、北朝鮮軍を撃退するために必要な援助を与えるよう加盟国に勧告した。そして77日の決議84では、加盟国の提供した兵力を米国指揮下の統一司令部に置くことを勧告したほか、統一司令部には国連旗の使用が許可された。この決議に基づき、725日に朝鮮国連軍司令部が設置され、ダグラス・マッカーサー米国極東軍事最高司令官が統一司令官に任命された。

ここで、韓国の支援や米国による指揮権についての安保理決議8384は、「決定」ではなく国連憲章第39条[4]に基づく「勧告」として採択されていることに注意する必要がある。前述のように、国連軍を構成するために必要な特別協定のプロセスは行き詰まっており、国連として「決定」することはできず、「勧告」以上に強い決議を挙げることは不可能であった。したがって、朝鮮国連軍を構成したのは国連加盟国から特別協定に基づいて提供された兵力ではなく、米国と深い結びつきを持つ15か国(英国、タイ、カナダ、トルコ、豪州、フィリピン、ニュージーランド、エチオピア、ギリシャ、フランス、コロンビア、ベルギー、南アフリカ、オランダ、ルクセンブルク)の兵力と米軍であった[5]。つまり、朝鮮国連軍の実態は、あくまでも米軍を中心とした多国籍軍なのである。

国連における朝鮮国連軍の解散をめぐる議論
 以上のように、朝鮮国連軍はその存在の根拠があいまいである。朝鮮国連軍が韓国に存在し続けることの是非については、これまでも度々議論の対象となってきた。
 まず、19537月に板門店で署名された朝鮮戦争の休戦協定は、以下のように全外国軍の撤退に向け交渉するよう勧告している。
 
停戦協定第4条:朝鮮問題の平和的解決を確保するため、双方の軍司令官は、双方の関係国の政府に対して、休戦協定が署名され、効力を生じた後3カ月以内に、これらの国の政府がそれぞれ任命する代表により一層高級な政治会議を開催してすべての外国軍隊の朝鮮からの撤退、朝鮮問題の平和的解決その他の諸問題を交渉により解決するよう勧告する[6]。

 実際に南北双方は、19544月から7月にかけジュネーブで開催された国際会議において、外国軍の撤退について協議した。しかし、韓国は195310月に米韓相互防衛条約に署名して米軍の韓国駐留を認めていた。ジュネーブでの交渉で北朝鮮は全外国軍の撤退を要求したが、交渉は成果を得られず決裂し、外国軍の撤退問題は解決されないまま現在に至っている。
 一方、中国は休戦協定締結後の19549月に人民志願軍の撤退を発表し、1958年までに全軍の撤退を完了した。米国以外の朝鮮国連軍参加国も休戦協定後に逐次に韓国や日本から撤退を開始し、19726月までに連絡将校などを除き全兵力の撤退を完了させた。
1957年に朝鮮国連軍の司令部が東京からソウルに移るとともに、米韓相互防衛条約によって駐留する在韓米軍司令官が朝鮮国連軍の司令官が兼務した。一方で朝鮮国連軍は19507月の大田協定で韓国軍の作戦統制権も握り続けた。197811月に米韓連合司令部が設置されてからは、米韓連合司令部司令官が朝鮮国連軍司令官を兼務することにより、朝鮮国連軍司令官がもつ韓国軍の作戦統制権は、米韓連合司令部の司令官が継承した。
 朝鮮国連軍の解体を求める議論は1970年代以降も国連内で続いた。1971年、中国の国連代表権が台湾から中華人民共和国に移ると、中国は朝鮮国連軍の解体をしばしば要求するようになった。また、1975年には国連総会でソ連など東側諸国が提出した朝鮮国連軍の解散と全外国軍の撤退を要求する決議第3390B7]が採択された。しかしそれに反対する西側諸国による決議第3390A8]も同時に採択されたため、決議の効果は相殺された。1991年に韓国と北朝鮮が国連に同時加盟を果たしてからは、北朝鮮が90年代を通じて安保理に対して朝鮮国連軍の解体を繰り返し要求した。だが朝鮮国連軍の解体が現実性を持って検討されることはなかった。
しかし冒頭で述べたように、2018年の南北・米朝首脳会談をきっかけに、朝鮮戦争終結が再び議論されるようになり、それに伴って朝鮮国連軍の扱いについても再び議論が求められる状況が生まれた。

朝鮮国連軍の「再活性化」
 ここで、米国による朝鮮国連軍「再活性化」(韓国では「維新」と呼ばれる)の動きに触れておく必要がある。朝鮮国連軍の「再活性化」とは、朝鮮国連軍司令官である在韓米軍司令官が2015年頃に開始した動きで、朝鮮半島における緊張が高まる中において、休戦後に形骸化している朝鮮国連軍を建て直す試みであり、米国以外の参加国に積極的な貢献を求めようとしている。
具体的な動きとして、20187月、朝鮮国連軍司令部は創設以降初めて、米軍ではなくカナダ陸軍のエア中将を副司令官に任命した。さらに、20197月にはオーストラリア海軍のメイヤー中将が副司令官となり、2代続けて米軍以外の将官が副司令官を務めることになった。副司令官以外にも、米軍は在韓米軍と朝鮮国連軍の兼職者を減らすとともに、英、豪、加などを中心に米国以外の朝鮮国連軍参加国の要員を増やしている。
米国が朝鮮国連軍の再活性化を目指す背景の一つには、韓国が米韓連合軍の戦時作戦統制権の返還を求めていることがある。米韓は2012年に米韓連合軍の戦時作戦統制権を韓国に返還することで合意したが、その実現は延期され続けている。文在寅大統領は、自身の任期である2023年までに戦時作戦統制権の韓国への移管を目指している。
米国は朝鮮国連軍を「国連軍」らしく他国の関与を強めることで、作戦統制権を韓国に返還した後も「朝鮮国連軍」司令官として朝鮮半島における軍事活動の主導権を握ろうとしているのではないかと考えられる。
このように朝鮮国連軍の再活性化を目指す米国やその同盟国には、朝鮮戦争の終結の後にも、朝鮮国連軍を存続させ、その大義名分を通じて米軍の影響力の維持を図かる意図があるとみて良いであろう。20192月、朝鮮国連軍のエア副司令官は、朝鮮日報のインタビューに対し、朝鮮戦争終戦後も「国連軍は恒久的平和体制が定着するまで継続的な支援の役割を果たす」「終戦宣言後も国連軍司令部は維持され、勤務要員は2倍から3倍に増える」と述べ、終戦後も朝鮮国連軍の役割は失われないと強調した[9]。

 以上で見てきた通り、朝鮮国連軍は本来の国連軍とは異なる存在であり、その成立の根拠は非常にあいまいである。ましてや、幸いにも朝鮮戦争が当事国の合意によって終結宣言に至ることになれば、その時点において朝鮮国連軍の役割もまた、いったん終了する、というのが、自然な論理的帰結であろう。
 朝鮮戦争の終結宣言のあとにも、平和維持のために何らかの国連が関与した部隊があることが望ましいという議論があることは承知している。その議論に反対ではない。しかし、戦争の当事国、とりわけ朝鮮半島の主人公である南北の当事国が、そのような部隊の存続を希望することが大前提となる。また、そのような部隊は「朝鮮国連軍」とはまったく異なる使命と役割と仕組みをもつものになるはずである。
 
 本稿は監視プロジェクトの討論を経ながら作成された。(森山拓也)
 
4 国連憲章第39条:安全保障理事会は、平和に対する脅威、平和の破壊又は侵略行為の存在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第41条及び第42条に従っていかなる措置をとるかを決定する。
5 当時国連非加盟国だった韓国は、1950715日の大田協定により、作戦指揮権を朝鮮国連軍に委ねた。
日本語訳は次の資料を参照。大沼久夫編[2006]『朝鮮戦争と日本』p.342.
9『朝鮮日報』201928日(韓国語)http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2019/02/08/2019020800321.html# 

2020/04/24

監視報告 No.22


監視報告 No.22  2020年4月24日

§国内産業の自立発展が「正面突破戦」の実態であり、非核化の焦点が米国の敵視政策の撤回であることに変わりはない

 金正恩委員長が昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会(第7期第5回)で「正面突破戦」を宣言し[1]、その後の動向が注目された朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)。先月から北朝鮮はミサイル訓練や実験などを繰り返しているが、朝鮮半島の非核化を平和的に実現できるかどうかが米国政府の行動にかかっているという状況に変わりはない。

昨年末の朝鮮労働党中央委員会総会について、日本では金正恩が演説で「北朝鮮が保有することになる新しい戦略兵器を世界は遠からず目撃することになる」[2]と述べたことが注目されたが[3]、「正面突破戦」を宣言した金正恩の演説の要旨は、米国政府が北朝鮮に対する敵視政策を撤回することは当面ないとの前提で、「自力更生」や「自給自足」によって国際社会による厳しい制裁を「正面突破」し、社会主義を発展させようということであり、演説はその実現ために各産業部門が取り組むべき課題に力点が置かれている。
具体的には、金正恩は、
「核問題がなくても、米国は別の問題で我々に難癖をつけ、米国の軍事的・政治的威嚇が終わることはないでしょう」、
「敵対勢力の制裁と圧力を無力化して社会主義建設の新たな道を切り開くために、正面突破戦を開始しなければなりません」
と述べ、「今日の正面突破戦における基本戦線は経済部門」であり、なかでも「農業部門は正面突破戦を成功させるための主要攻略部門である」と明言している[4]。金正恩が総会の終わりに述べた次の言葉が、「正面突破戦」が意味するところを最も明確に示しているだろう。
「第7期第5回朝鮮労働党中央委員会総会の基本思想、基本精神は、情勢が好転することを座して待つのではなく、正面突破戦を展開すべきであるということです。
 言い換えれば、平穏に暮らそうとする我々に米国と敵対勢力が干渉してこないなどとは夢にも思ってはならず、社会主義建設の行く手を阻む困難を乗り切るために、自力更生の力で正面突破すべきであるということです」[5]。

 実際、国営通信社である朝鮮中央通信を読むと、経済司令部と位置付けられている内閣の(キム)(ジェ)(リョン)総理が頻繁に産業施設などの視察に訪れていることや[6]、北朝鮮の労働者が「正面突破戦」の宣言を受けて「奮闘」したり「革新を起こしている」様子をうかがい知ることができる。
例えば、
「朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で提示された綱領的課題を体して、(サン)(ウォン)セメント連合企業所の活動家と労働者がより多くのセメントを生産するために奮闘している」[7]、
金正淑(キムジョンスク)平壌紡織工場の労働者たちが正面突破戦の最先頭に立って疾走するという熱意を抱いて織物の生産において革新を起こしている」8
等々。
また「正面突破戦」の「主要攻略部門」である農業部門では、「正面突破戦の初年である今年に朝鮮労働党が提示した新しい穀物生産目標を達成するための課題と方途」についての討議が「農業部門総括会議」で行われたことや[9]、新しいリン酸肥料工場の建設や干拓地の建設が精力的に進められていること[10]などを同紙は伝えている。リン酸工場については、とくに重点が置かれているようで、金才龍だけでなく複数の北朝鮮政府高官が視察に訪れている[11]。
演説の中で述べられた軍事的な面は、あくまでこうした産業の強化を外国からの侵略によって妨害されないよう保証する必要性を説いたものに過ぎない。朝鮮中央通信[12]は、金正恩が演説で、
「前代未聞の厳しい挑戦と困難に立ち向かうための正面突破戦で確かな勝利を治めるためには、強力な政治的、外交的、軍事的保証がなければなりません」
と述べたと伝えている。
 北朝鮮が繰り返しているミサイル訓練や試射についても、それに対する「深い懸念」を国連安保理の会合の後に表明したヨーロッパの5か国に対する北朝鮮政府の反論からわかるように、朝鮮戦争開戦以来、未だに北朝鮮に対して向けられている米軍と韓国軍に対する自衛のためだというのが北朝鮮政府の立場だ。ヨーロッパ5か国の声明に対して北朝鮮外務省の報道官は次のような談話を発表した。
「ロケット砲兵の通常的な訓練までも糾弾の対象であり、何らかの『決議違反』になるのなら、われわれに目前にある米国と南朝鮮の軍事力は何でけん制し、わが国家はどのように守れと言うのか。
……現在のように無鉄砲にわれわれの自衛的行動を問題視すれば結局、われわれに自国の防衛を放棄しろと言うことと同じである」[13]。
 自主・自立・自衛を掲げる「チュチェ思想」に基づいて軍の近代化を図る北朝鮮の軍事政策は、米国の「核の傘」の下で米軍との連携を一層深め、憲法に違反して敵地攻撃能力の増強を図る日本や覇権主義国家の米国と比較して、その規模においても意図においても控えめだが、米国との戦争状態が依然として続いている以上、北朝鮮としてもそれに対応し得る軍事的措置を取らざるを得ないだろう。
北朝鮮が米国との交渉に関心を示さず、自力更生・自給自足の道を明確にして行動に移しているからといって、米朝両政府が朝鮮半島の平和と非核化を約束した2018年のシンガポール合意実現への道が完全に閉ざされたと考えるべきではない。
 金正恩は演説の中で次のようにも述べている。
「米国が北朝鮮に対する敵視政策を続けるなら、朝鮮半島の非核化は永遠にありえません。そして米国の敵視政策が撤回され、朝鮮半島に永続的で持続性のある平和体制が構築されるまで、北朝鮮は国家の安全のために必要かつ必須の戦略兵器の開発を着実に続けていくことになります」、
「我々の抑止力強化の幅と深さは、北朝鮮に対する米国の態度によって適切に調整されることになります」[14]。
 米国政府が北朝鮮に対する敵視政策を撤回して北朝鮮との信頼関係を構築する姿勢を行動で示すなら、交渉による平和的な朝鮮半島の非核化への道は再び開かれると見るべきだろう。(前川(はじめ)

1 「Fifth Plenary Meeting of Seventh Central Committee of Workers' Party of Korea Held」(『朝鮮中央通信』英語版、202011日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「English」を選択後、「Fifth Plenary」で検索。
2 注1と同じ。
3 例えば、「『世界は新たな戦略兵器を目撃する』 北朝鮮、4日間の総会閉会」(『朝日新聞』、202013日)、「正恩氏『世界が新兵器見る』 米を威嚇『遠からず』 党中央委」(『毎日新聞』、202013日)など。
4 注1と同じ。
5 注1と同じ。
6 例えば、「金才龍総理が人民経済の複数の部門を視察」(『朝鮮中央通信』日本語版、2020121日)、「金才龍総理が北倉(プクチャン)火力発電連合企業所、長山(チャンサン)鉱山、(スン)(チョン)燐酸肥料工場建設場などを視察」(同、2020216日)など。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、それぞれ「人民経済の複数の部門」、「北倉火力」で検索し、該当する日付を参照。
7 「沸き返る屈指のセメント生産拠点」(『朝鮮中央通信』日本語版、202019日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、「沸き返る屈指」で検索。
8 「織物の生産において革新」(『朝鮮中央通信』日本語版、2020220日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、「織物の生産」で検索。
9 「2019年農業部門総括会議が開会」(『朝鮮中央通信』日本語版、2020118日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、「農業部門総括会議」で検索し、該当する日付を参照。
10 リン酸肥料工場については、「順川燐酸肥料工場の建設が総建築工事量の90%界線を突破」 (『朝鮮中央通信』日本語版、2020222日)、「完工の日を早めるために」 (『朝鮮中央通信』日本語版、202042)など。干拓地建設については、「干拓地の建設を本格的に推進」(『朝鮮中央通信』日本語版、202047日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、それぞれ「順川燐酸肥料工場」、「完工の日を早める」、「干拓地の建設を本格的」で検索し、該当する日付を参照。
11 「金才龍総理が人民経済の複数の部門を視察」(『朝鮮中央通信』日本語版、2020121日)、「朴奉(パクポン)(ジュ)党副委員長が複数の単位を視察 」(『朝鮮中央通信』日本語版、202023日)、「(チェ)(リョン)()委員長が順川燐酸肥料工場の建設場を視察 」(『朝鮮中央通信』日本語版、202025日)など。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、それぞれ「人民経済の複数の部門」、「朴奉珠党副委員長」、「崔龍海委員長」で検索し、該当する日付を参照。
12 注1と同じ。
13 「朝鮮外務省代弁人 われわれの通常的な訓練を非難する一部の国々の無分別な行為を糾弾」(『朝鮮中央通信』日本語版、202037日)。
http://kcna.kp/kcna.user.home.retrieveHomeInfoList.kcmsf から「日本語」を選択後、「無分別な行為を糾弾」で検索し、該当する日付を参照。
14 注1と同じ。



2020/02/17

監視報告 No.21

監視報告 No.21  2020年2月17日

§韓国市民団体の声明に賛同するとともに、日本の市民社会の行動を訴える

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩委員長が米国政府の「勇断」を待つ期限として予告していた昨年末が過ぎた。金正恩が、昨年末に開催された朝鮮労働党中央委員会総会で、米国が朝鮮に対する敵視政策を続ける限り「朝鮮半島の非核化は永遠にありえない」と宣言する一方で[1]、米国政府には敵視政策を撤回する気配はなく、朝鮮半島の平和と非核化を巡る米朝交渉の今後の行方が懸念される。
 しかしシンガポールでの首脳会談で米朝両首脳が約束した朝鮮半島の平和と非核化の実現を、私たちは諦めるわけにはいかない。米朝交渉がこのまま行き詰まるのを避け、朝鮮半島を非核化して地域の平和と安定を実現させるためには、金正恩委員長とドナルド・トランプ大統領の個人的な関係だけに頼るのではなく、私たち市民も行動する必要がある。関係国の市民社会が、それぞれの政府に対して朝鮮半島の平和と非核化のために必要な行動をとるよう、目に見える形で要求すべきだ。
 韓国の市民社会では、そうした動きが見られる。その一つとして、韓国の市民団体が北朝鮮・韓国・米国の3か国政府と国際社会に向けて発信した声明を以下に紹介する[2]。声明は、シンガポール合意を実現するために、米朝対話の再開と北朝鮮に対する制裁の緩和を求めている。
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再び対決と敵対の時に戻ることは出来ません

 朝鮮戦争勃発70年となる2020年の新年に、朝鮮半島情勢は依然として視界の見通せない霧の中にあるようです。朝米交渉は大きな突破口を見いだせぬままこう着状態が続いています。去る1年間、南北間の対話や交流は一歩も進みませんでした。一方で「新たな道」を予告した北側は、最近[朝鮮]労働党全員会議を通じて「正面突破戦」を決議し、経済的自力更生[方針]と新たな戦略兵器の開発を強調しました。

 2018年に敵対と対決の時代を終息できるという希望を抱いたときから]2年も過ぎていません。周知のように朝鮮半島の平和の道は、絶え間なく忍耐を続け、話し合い、互いに信頼を築く過程でなければなりません。今私たちは、その途上に大きな困難が生じているという事実を直視せざるを得ません。だからと言って忍耐を捨て、対決を選んではなりません。今日、私たち市民社会は、いかなる場合にも決して板門店の南北首脳会談以前、一触即発の戦争の危機が高まったあの時に戻ってはならないという切羽詰まった思いでこの場に集まりました。私たちは、朝米と南北の対話が速やかに再開され、困難な中で果たされた南北、朝米の合意は必ず履行されねばならないという点を強調し、南北そして米国政府に次のように提案するものです。

朝米双方は、対話再開のための条件作りに努力しなければなりません。
 朝米は昨年のハノイ会談のみならず、6月の板門店会談後にも意味のある対話を進展させることが出来ませんでした。年末の朝米接触も結局成功に至りませんでした。シンガポールで朝米は、相互の信頼構築が朝鮮半島の非核化を促進できると宣言しましたが、このような合意は守られませんでした。とくに私たちは、北側が核・ミサイル実験凍結などを含む一連の措置[を取ったの]に比べて米国は、これに相応するいかなる信頼措置も見せなかったという事実に注目せざるを得ません。これは一括妥結にせよ、段階的、同時的履行にせよ、朝米間で接点が生じえない理由でもあります。私たちは、米国が事実上北側の「先非核化を要求」し時間稼ぎをすることにも、北側がミサイル実験などで軍事的緊張を作り出すことにも断固として反対します。北側と米国は、対話と交渉による朝鮮半島非核化の実現と平和体制構築の原則を明確にさせ、対話再開の条件を作るためにあらゆる努力を傾けねばなりません。私たちは、さらに大きな合意を可能にさせる米国の政治、軍事、経済的信頼構築措置を要求し、北側にもこれ以上の軍事行動を中止することを求めます。

国連と米国は、最低限の人道分野における対北制裁は中止しなければなりません。
 国連と米国は、対北制裁を維持し続け、さらに制裁を強化してきました。米国は、北側の優先的な非核化措置が無ければ制裁解除は不可能だという立場を取りつづけています。制裁は北側内部の弱者にまで悪影響を及ぼしているという事実も確認されています。制裁が問題解決の手段を越えている状況のもとで、朝米間の信頼構築はさらに困難となっています。制裁は南北の交流協力も完璧にまで阻止しています。私たちは「先非核化、後制裁解除」というやり方が朝鮮半島の核対立の解決に失敗してきた歴史が繰り返されないことを願っています。最低でも災害などの人道的[支援を]放置するような制裁措置は中断されなければなりません。国連の安全保障理事会も中国やロシアの制裁一部解除の決議案について積極的に論議し、朝米交渉の進展を引き出すことを要請します。

対話と 軍事行動は両立できません。
 私たちは、韓米合同軍事演習の延期決定が朝鮮半島平和プロセスを動かしたという事実を記憶しています。相手方を刺激し圧力を加える軍事的脅威と対決は、対話と交渉に何ら手助けをもたらしません。私たちは、韓米両国政府が3月に予定されている韓米合同軍事演習を中止する決断を下すことを求めます。韓米合同軍事演習の中止は、消えかかっている朝米交渉の火種を起こす措置となるでしょう。

南北の合意履行のため、韓国政府による決然たる措置を求めます。
 朝米交渉が中断すると南北関係も急速に滞ってしまいました。交流や協力事業をはじめ、南北が合意した事項は、国連と米国の対北制裁により一歩も進んでいません。本当にもどかしく息苦しいほどで、嘆かわしい状況です。開城工業団地と金剛山観光の再開、離散家族問題解決のための人道的協力、南北の鉄道・道路連結プロジェクトなどをこれ以上遅らせてはなりません。南北軍事共同委員会の構成など、軍事分野の合意履行も同様です。韓国政府は、南北協力事業のための広範囲な制裁免除をもっと積極的に要求し、自立性を発揮すべきです。困難でも政府が主導的に朝鮮半島の問題解決のための場を作り、現状を変えるための努力をすべきです。

私たちは、戦争を終息させ平和を創るための市民社会の責務を果たす所存です。
 今年は朝鮮戦争[勃発から]70年の年です。分断と停戦による対決と敵対が無限に再生産される悲劇はもう終わらせなければなりません。韓国の市民社会は、朝鮮半島の平和を創る当事者です。私たちには、対話と交渉を通じて、朝鮮半島の恒久的な平和体制構築と非核化が実現されるよう促進する責務があります。私たちは朝鮮半島の平和に対する韓国民の切迫した声を組織し、米国と北側のみならず国際社会に広く知らせていくつもりです。国際社会が私たちの平和のための行動に共に歩んでくれることを求めていきます。私たちは2020年が戦争を終わらせ、新たな平和の時代を切り拓く1年になるため、最善を尽くして行くことでしょう。

2020 1 7
6.15共同宣言実践南側委員会、対北協力民間団体協議会、民族和解協力汎国民協議会、市民社会団体連帯会議市民平和フォーラム、 韓国宗教人平和会議

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 日本の私たちは、この声明に賛同する。同時に日本の市民社会における行動の必要性を痛感する。
朝鮮半島情勢は、隣国である日本の市民社会にも直接かかわる問題であるというだけではない。大日本帝国時代に朝鮮半島を植民地化した日本には、その後の南北朝鮮の分断と敵対に対して歴史的な責任があり、今も日本が提供する基地を拠点に米軍が朝鮮半島における戦争体制を維持しているという点では、現在的な関与と責任がある。私たちが暮らす北東アジアの平和と安定を願うなら、私たち自身も主体的に行動しなければならない。
私たちは、現在の局面において、日本の市民社会が次の行動を起こすことが有効であると考え、ともに行動することを呼びかけたい。 

  •  多くの市民団体や個人が連携して日本政府や国会議員事務所を訪問し、2018年板門店宣言、シンガポール米朝首脳共同声明が作り出した歴史的な契機を活かし、朝鮮半島並びに北東アジアの非核化・平和に関して日本政府が積極的に関与することを求める申し入れを行うこと。日本政府が、朝鮮半島に日本を加えた非核化を提案することが、そのような積極的な関与の方法の一つになる。
  • 日本、韓国、米国の市民団体・NGOが連携して国連安保理に対して米朝交渉を前進させるために、制裁決議に含まれている「継続的な見直し」条項(例えば安保理決議23972017)第28節)を活用した協議を行うこと、また、昨年末にロシア、中国が提案した制裁の一部緩和を求める決議案の採択に向けた努力を行うこと、などの要請を行うこと。
  • 自治体、宗教者、法律家、医師・医学者、ジャーナリスト・文筆家など、市民社会を構成する様々なセクターに働きかけて、この問題の日本にとっての歴史的重要性を訴え、可能な行動を促すこと。

(前川大)

1 『朝鮮中央通信』(日本語版、202011日)
2 韓国語版
日本語訳は大畑正姫さんによる。


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