2022/12/26

監視報告 No.36

 監視報告 No.36  2022年12月26日


§米韓合同軍事演習の中止表明が緊張緩和への第一歩となる
 
 朝鮮半島の緊張緩和が求められている。
 米韓合同演習は在日米軍・自衛隊を巻き込んでエスカレートし、朝鮮人民民主主義共和国(DPRK、北朝鮮)は核戦力政策法を制定し、記録的なミサイル発射を繰り返している。国際社会の傍観は許されない。朝鮮半島情勢の改善に向けた方策について、具体的な知恵を絞る必要がある。

2022年8月下旬以降、朝鮮半島情勢は緊迫の度を高めた。米韓両軍は822日から91日にかけて大規模な合同軍事演習「ウルチ・フリーダム・シールド」を実施した。同演習では、指揮所演習に加え、北朝鮮に攻め込むことを想定した演習を含む大規模な野外機動演習が4年ぶりに行われた。その背景には20225月に対北朝鮮強硬派の尹錫悦が韓国大統領に就任したことがある。
 一方で、北朝鮮では、98日、先制核攻撃を容認する「核戦力政策に関する法令」が公布された[1]。それに対し、米韓両国は外務・国防次官級による「拡大抑止戦略協議体」会合(916日)を開催。北朝鮮による同法令制定に「深刻な懸念」を表明するとともに、北朝鮮の核攻撃には「圧倒的かつ断固とした対応」をとるとした。その一週間後(923日)、日本の横須賀を母港とする米原子力空母ロナルド・レーガンが釜山に寄港し、約5年ぶりに米韓海軍合同演習(926日~29日)に参加した。北朝鮮は、おそらく同演習に対抗して、戦術核運用部隊の発射訓練(925日~109日)を実施した。その後も北朝鮮と日米韓、とりわけ、米韓との間で言葉の応酬と軍事的応酬が続いている[2]
 また、1113日には日米韓首脳がプノンペンで5年ぶりとなる共同声明を発した[3]。それが示すように、日韓2国間の軍事協力に対する歴史的な障壁は尹政権のもとで崩れつつあり、この地域における3か国の軍事協力が顕在化していることも、見逃してはならない新しい傾向である。日本の関与の深まりに対して北朝鮮は警戒を強めている[4]
 こうした軍事的緊張が続けば、誤認や誤算による武力衝突が起こりかねない。核兵器使用へのエスカレーションも排除できない。そうした危険を防ぐために、いま何が必要なのであろうか。

 北朝鮮の「核戦力政策に関する法令」
 まず、202298日にDPRK最高人民会議が採択し、同日に公布された「核戦力政策に関する法令」(「核戦力政策法」あるいは「新法」)の危険性を具体的にみておこう。
 この法律は、201341日に公布された「自衛のための核兵器国地位確立法」(以下、旧法)にとって代わるものである[5]。旧法は、核兵器を米国の敵視政策と核の脅威に対する「防衛手段」(第1項)と明記し、侵略の抑止と攻撃の撃退に使用する(第2項、第4項)と述べるに留まっており、核兵器を実際に使用する条件を法制化する段階には至っていなかった。それに対して新法は、核兵器の基本的使命を戦争の抑止と抑止が破れたときの撃退であるとする点は変わっていないものの、核兵器を実際に使用するに至る判断に関する原則や具体的条件を定めている。その部分に多くのリスクが存在する。
 まず、核兵器に対する核兵器の使用に関する基本原則については、修辞的な違いを削いでしまえば、米国などの使用原則と本質的には違わない。核兵器国(米国が念頭にある)が、通常兵器であっても北朝鮮に対して重大な侵略と攻撃を行った場合、「最後の手段」として核兵器を使用する。また、核兵器国(米国)と結託した非核国(韓国や日本)の攻撃も核兵器使用の対象となることが述べられている。いわゆる、核兵器の先行使用についての躊躇は見受けられない。
 次に新法第6項は核兵器の使用条件を列挙している。これを読むと、北朝鮮は核兵器の「先行使用」のみならず、核兵器によって戦局を決定的に変えようとする「先制使用」[6]を許容していることがわかる。「戦争の拡大や長期化を防ぎ、戦争の主導権を掌握するための作戦上」の使用(第64)という考え方がそれである。
 また、新法においては、使用条件に基づいて核兵器の使用を決定するプロセスにおいても重大なリスクを孕んでいる。新法の第62は、「国家指導部と国家核戦力指揮機構に対する核および非核攻撃が強行されたり差し迫ったと判断される場合」には核兵器を使用することができるとしているが、指揮統制システムが「危機に瀕する場合、事前に決まった作戦方案にしたがって…核打撃が自動的に、即時に断行される」(新法、第33)と定めている。すなわち、金正恩自身あるいは彼が使用する指揮統制システムに危害がおよび、最高権力者の指揮統制が不能になったときには、事前に定められた核攻撃計画が自動的に即時に実行されるというのである。この危機事態の到来を発射実行部隊の司令官はどのように知るのか、後述するように多数の核ミサイル部隊が存在すると考えられる中で、上級司令官から末端司令官への命令伝達チェーンの合理的な自動化とは何か、またどのように可能か、それが戦時に正しく働くことがいかに保証されるか、などの疑問が生じる。このような疑問に応えるための情報はまだない。しかし、一人に絶対的な権力が集中した北朝鮮のような国家における戦略的のみならず戦術的核兵器発射の指揮統制には、このような避けがたいリスクが伴うであろうことは十分に予想される。
 「核戦力政策法」が公布されてから約2週間後に行われた北朝鮮の核兵器部隊の実戦訓練は、このようなリスクの存在を裏書きするものであった。

 戦術核部隊の実戦的発射訓練
 20221010日の朝鮮中央通信(KCNA[7]によると、朝鮮労働党中央軍事委員会(委員長:金正恩)は925日から109日にかけて、「戦術核作戦部隊の発射訓練」を行った。KCNAはその期間に行った7回の戦術核ミサイル発射の訓練目的や内容を説明した。因みにKCNA報道と発射の度に出された韓国軍などの情報を重ねると、この間に発射した核弾頭搭載可能な弾道ミサイルは12発であり、飛行距離300360kmの近接距離弾道ミサイル[8]9発、600km800kmの短距離弾道ミサイル[9]が各1発、4600kmの中距離弾道ミサイル[10](日本列島越え)1発であった。
 KCNAは、戦術核作戦部隊の発射訓練は「戦争抑止力と核反撃能力を点検し、それをもって敵への厳しい警告とするため」であり、「さまざまなレベルで実際の戦争のシミュレーションのもとで」行ったと述べている[11]。しかし、記事を読むと、すべての発射訓練がすでに作戦配備されている核兵器を扱う部隊の訓練とは言い難い。例えば、驚きをもって受け止められた貯水池からの水中発射については「貯水池下の計画されているサイロ建設の方向性が確認された」[12]と説明されていることから推察すると、実戦的フィージビリティ・テストの性格をもつ発射であったと考えられる。また104日の日本列島越えの「新型中距離弾道ミサイル」の発射は、戦術的訓練と呼ぶよりも日本やグアムを標的にした戦略的攻撃能力を誇示する「(敵への)より強力で明確な警告」[13]という政治的意図をもった発射であった。
 他の戦術核発射の部隊訓練に関しても、1010日のKCNAの報道は、北朝鮮がすでに戦術核を実戦配備し、使用の準備ができていることを米・韓・日に誇示するための、戦争抑止目的の側面が強いことを印象づける。(さらに言えば、前述した「核戦力政策法」の公布という行為自体にも、そのような対外的な戦争抑止の狙いを読み取ることができる。)
 核部隊訓練の性格に関してこのような留保を前提とした上で、それでも訓練内容には北朝鮮の核兵器使用に関して見逃すことのできないリスクを指摘することができる。
 1010日のKCNA報道を分析すると、訓練内容は多岐にわたっている。訓練内容には、核弾頭の弾薬庫からの取り出しと運搬、核弾頭のミサイル本体への装着、標的の選定と核爆発様態(空中爆発、直接攻撃、牽制攻撃など)の決定、決定内容にしたがった発射部隊の特定と命令の伝達、発射台の移動、発射手順の確認と実行、ミサイルの動作と威力の評価などが含まれている。
 さらに、韓国軍の発表では、7回の発射は少なくとも6か所の異なる地点―泰川テチョン順安スナン三石サムソク順川スンチョン舞坪里ムピョンリ文川ムンチョンから発射された。異なる地点からの発射は異なる部隊による発射であると考えられるので、戦術核発射部隊の数は相当数に上るであろう。複雑な発射手順を伴う指揮・統制の体制、とりわけ最高司令官を含む体制の一部に事故があったときに体制が正しく機能しないリスクは極めて高い。北朝鮮の戦術核発射ミサイルの多くは、戦時において圧倒的多数の通常弾頭を発射するミサイルと両用のミサイルであることを考えると、戦時における誤発射のリスクはさらに高まる。
 KCNA報道は、訓練において想定された核攻撃の標的についてもいくつかの具体例を示した。600㎞(韓国軍報道)を飛行した短距離弾道ミサイルの標的を、日本海(東海)の特定の高度の上空に設定した925日の発射は、当時繰り返し展開した米原子力空母を空中核爆発で破壊するシナリオであった可能性が高い[14]。作戦地域内にある韓国の空港を近接距離弾道ミサイルで核攻撃する発射訓練を、爆発様態を変えて数回行っている。また、近接距離および短距離弾道ミサイルを用いて敵の主要軍事司令部を想定した発射訓練を行った。このときの短距離ミサイルの一つは800㎞を飛行したとされる(韓国軍)が、この距離は佐世保、岩国などの在日米軍基地に達しうる距離である。さらに敵の主要港湾を想定した近接距離ミサイルの発射訓練も報告されている。北朝鮮自身が「実際の戦争のシミュレーション」と述べているように、これらの標的設定は極めて実際的であり、実行可能なものである。

当面の至上命題:緊張緩和と武力衝突回避
 以上で説明してきたように、北朝鮮の「核戦力政策法」や「戦術核作戦部隊の訓練」は、朝鮮半島における核兵器使用に関するリスクは、意図的にも事故や偶発的にも高まっていることを示している。
 加えて、リスクを高める重要な要因として、北朝鮮の「核戦力政策法」や「戦術核作戦部隊の訓練」の報告における表現や言説に見られる際立った特徴を指摘したい。それは、使用に関する言説が極めて直截的であり、核兵器使用がもたらすであろう国際人道法上の諸問題への配慮や躊躇がほとんど見られず、使用決定への敷居が極めて低い点である。断っておくが、これをもってDPRKやその指導者が非人道的であるとするような主張に筆者は与しない。DPRKが国連憲章の差別なき公平な適用を国連総会においても安保理においても繰り返し求めていることが示すように、私たちが考えるべき本質的な問題は別のところにある。
 北朝鮮の核兵器言説の特異さは、北朝鮮が巨大な力の差のある軍事強国と70年近く体制維持のために戦ってきた歴史から生まれている。米国、韓国、日本を合わせると、3か国は北朝鮮の500倍以上の軍事費を費やしている軍事同盟である。この絶望的な不均衡の中から核兵器の破壊力を絶対視する北朝鮮の政策が生まれている。
 この敵対関係を平和的に解消することが国際社会の目指すべき課題であるが、そのためには、まず現にある核兵器使用のリスクを軽減する必要がある。そして、その軽減努力が次の外交的ステップへのドアを開くような道筋を構想する必要がある。
 このような理由から、現局面における国際社会の優先的課題は朝鮮半島における武力衝突の可能性を無くすることであろう。武力衝突は核兵器使用局面に至る入口にあるリスクである。そのために、米国と韓国は朝鮮半島および周辺における合同軍事演習を当面の間中止することを表明すべきである。同時に米国、韓国、日本は朝鮮半島の軍事的緊張を高める言説を止め、緊張緩和に努めるべきであろう。
 北朝鮮の5か年計画にそった軍事力強化は続くであろう。好ましいことではないが、軍事圧力と経済制裁の繰り返しでそれを止めることができないことは、すでに繰り返し経験したことである。
 北朝鮮が外交に復帰する意思がないという懸念は、当面は当たっているであろうが、決定的なものではない。金正恩は98日の演説で「先に核兵器を放棄したり非核化するようなことは絶対にあり得ない」[15]と述べた。しかし、たとえば金正恩は、2017年に「いかなる場合にも、核兵器と弾道ミサイルは交渉のテーブルには乗せず、自ら選択した核戦力強化の道を一歩も譲ることはない」と主張していたが、それは「米国のDPRKへの敵視政策と核の脅威が明確に終了しない限り」[16]という条件の下においてであった。事実、翌年、南北の板門店宣言、またシンガポールでの米朝首脳声明で、その条件を満たすことと引き換えに、朝鮮半島の完全な非核化に合意した。
 北朝鮮は一貫して米韓合同軍事演習の中止を求めてきた。軍事的衝突と核兵器使用リスクを回避し、緊張を緩和し、次の外交ステップへの入り口を作るために、米韓はまず合同軍事演習のモラトリアムを表明すべきである。来年の米韓合同野外演習のスケールを拡大するという最近の韓国国防部の発表[17]は、まったく逆の方向を示すものであり、強く再考を求めたい。(渡辺洋介、梅林宏道)

注1 “Law on DPRK's Policy on Nuclear Forces Promulgated,” KCNA, September 9, 2022.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
2 例えば、111日、朝鮮労働党中央委員会のパク正天ジョンチョン書記は、米韓が北朝鮮侵略を意図した軍事的挑発を続けるなら、史上最もぞっとする代償を払うことになると発言した。それを意識してか、米国のオースティン国防長官は、113日に発出した米韓定例安保協議共同声明で、北朝鮮による米国と同盟国への核兵器の使用は受け入れられず、そうなれば金正恩体制の終焉を意味するだろうと述べた。
3 「インド太平洋における3か国パートナーシップに関するプノンペン声明」
https://www.mofa.go.jp/files/100421321.pdf
4 “KCNA Commentary Slashes Japan’s Moves against DPRK and Chongryon,” KCNA, November 16, 2022. “Press Statement of DPRK FM,” KCNA, November 17. 2022.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
5 “Law on Consolidating Position of Nuclear Weapons State Adopted,” KCNA, April 1, 2013.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。日本語訳は、梅林宏道『北朝鮮の核兵器世界を映す鏡』(高文研、2021年)の232-233頁を参照。
6 多くのメディア報道では、「先行使用あるいは第一使用」(first use)」を「先制使用」(preemptive use)と述べている。しかし、この2つは異なる概念であり、明確に区別して使用すべきである。
7 “Respected Comrade Kim Jong Un Guides Military Drills of KPA Units for Operation of Tactical Nukes,” KCNA, October 10, 2022.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
8 米国防総省の定義では射程0500㎞の弾道ミサイル。
"United States Government Compendium of Interagency and Associated Terms"
https://www.jcs.mil/Portals/36/Documents/Doctrine/dictionary/repository/usg_compendium.pdf?ver=2019-11-04-174229-423
9 射程5001100㎞の弾道ミサイル。同上。
10 射程27005500㎞の弾道ミサイル。同上。
11 注7と同じ。
12 同上。
13 同上。
14 「北朝鮮 日本の上空通過は『新型の中距離弾道ミサイル』」、NHK20221010日。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221010/k10013854001000.html
15 “Respected Comrade Kim Jong Un Makes Policy Speech at Seventh Session of the 14th SPA of DPRK,” KCNA, September 10. 2022.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
16 “Kim Jong Un Supervises Test-launch of Inter-continental Ballistic Rocket Hwasong-14,” KCNA, July 5, 2017.
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm  から日付により検索。
17 “S. Korea, U.S. to develop 'realistic' training scenarios on N.K. nuke, missile threats,” YONHAP NEWS, December 21, 2022.
https://en.yna.co.kr/view/AEN20221221004700325?section=news

2022/07/29

監視報告 No.35

監視報告 No.35  2022年7月29日


§朝鮮半島の2018年を無にしない国際的努力が必要である。6か国協議再開にむけて中国と米国のイニシャチブが求められる。

2018 年合意は失われたのか?
 2022年3月24日の朝鮮民主主義人民共和国(DPRK、あるいは北朝鮮)のICBM発射テストは、ICBMが新型であったかどうかの議論はさておいて、一つの重要な節目となる政治的できごとであった。
 それが戦略ミサイルの単なる一発射実験ではなくて、DPRKが政治的意図を込めた行動であったことは、発射を報じた『朝鮮中央通信』のものものしい書きぶりからもうかがうことができる[注1]。
 「敬愛する金正恩同志は、水曜日(注:3月23日)、DPRK戦略軍の新型ICBMの発射実験を行うよう命令書を発した。木曜日(注:3月24日)、金正恩同志は発射地点を訪れ、自ら新型ICBMファソン17号試験発射の総手順を指導した。
 変化し続ける国際政治情勢に対する彼の深い洞察、日々高まる朝鮮半島及び周辺での軍事的緊張、そして核戦争の危険をともなった米帝国主義者との避けることのできない永年の抗争から生じる朝鮮革命の長期的要求にかんがみて、金正恩総書記は歴史的な第8回労働党大会において、主体思想に基づく国防発展戦略と長期にわたる核戦争抑止力の強化政策を打ち出した。…」
 政治的、戦略的意図を明確にしたICBM発射実験のこの公式発表は、DPRKが、2018年4月以来、外交のための信頼醸成措置として自主的に取り組んできたICBM発射実験と地下核実験のモラトリアムを明確に破棄したことを意味している。
 すでに1月19日に、朝鮮労働党中央委員会政治局会議は、このような「信頼醸成措置」をすべて見直し、「暫定的に中止している全ての活動を再開」することを「早急に検討」するよう関連機関に指示していた[注2]。これが実行されたのが、3月24日の節目と理解することができる。
 この節目は、北朝鮮は2017年のような瀬戸際外交に戻ろうとしていることを意味するのだろうか?
 そうではないであろう。今年の年明け早々、1月5日に極超音速ミサイルの発射実験を行ったのを皮切りに、北朝鮮がかつてないペースで戦術誘導弾や中距離弾道ミサイルなどの発射を繰り返してきた。メディアのなかには、これを北朝鮮が米国を制裁緩和などへの交渉の場に引き出すための圧力であると示唆する報道もある[注3]。しかし、一連のミサイル発射は、もちろん望ましい事ではないが、米朝、南北関係の改善が見込めない中で朝鮮労働党大会において決定された戦争抑止力強化路線が実践されている姿として、冷静に受け止めるべきものであろう。
 2021年1月の第8回労働党大会は、2016年大会における「国家経済発展5か年戦略」が人民の生活水準向上に具現されるべき社会主義建設に失敗したことを公式に認めたうえで、「国家経済発展5か年計画」を策定した。そのなかで軍事力強化についても具体的な目標を掲げた。「核兵器の小型・軽量化、戦術兵器化」、「超大型核兵器の生産」、「極超音速滑空ミサイルの開発」、「水中及び地上発射の固体燃料ICBMの開発」、「原子力潜水艦と水中発射戦略兵器の保有」「軍事偵察衛星の運用」「無人偵察機の開発」などである[注4]。外交による緊張緩和が生まれない限り、これらの目標に向かって軍事力強化が進行することを、私たちは残念ながら冷静に受け止めざるを得ない。米国など核保有国の核兵器近代化が進行するのと同じ力学である。
 しかし、同時に、この党大会の決定については次の2点を忘れてはならないであろう。第1点は、北朝鮮にとって5か年計画の最重要課題は軍事ではなく、あくまでも人民の生活水準向上につながる経済建設であること、第2点は、それを担保する対米政策は「敵視政策の撤回を求め…力には力、善意には善意」の原則で臨むとしていること、である。つまり、外交の可能性が明確に示されている[注5]。
 一方では、ミサイル実験の頻発は、経済発展5か年計画において、軍事分野がもっている特性が関係していると考えられる。人民の生活水準の向上につながる農業を含む産業分野は、目に見える中間的な成果を短期に示すことはもともと困難な分野である。その上に気候変動の影響をうけた自然災害や新型コロナウィルスへの対応、長引く経済制裁などの悪条件のなかで、金正恩体制は計画の進捗の管理に困難を見出していると考えられる。そんな中で軍事技術開発部門は中間的な過程を成果として見せやすい分野であるため、党組織運営のなかでことさら目立った扱いを受けている可能性がある。

尹錫悦政権のもとにおける米韓の動向
 2022年5月、2018年首脳合意を牽引した韓国の文在寅大統領が退き、保守の尹錫悦大統領が政権の座に就いたことは、合意の行方に大きな変化を生み出している。
 尹大統領は、大統領選挙のころから文在寅政権の対北朝鮮融和政策を批判してきた。就任直後の5月21日にソウルで行われたバイデン大統領との首脳会談においては、米韓の北朝鮮政策が明確に変化したことを共同声明において打ち出した[注6]。
 まず、共同声明には書かれなかった重要なポイントがあることを指摘する必要がある。ちょうど一年前の2021年5月21日、ワシントンDCにおいてバイデン・文在寅の米韓首脳共同声明が発表された。そこでは両首脳は次のように2018年首脳合意の継承を明記した[注7]。
 「我々はまた、2018年の板門店宣言やシンガポール共同声明のような、南北朝鮮間や米朝間の約束に基づく外交と対話が、朝鮮半島の完全な非核化と恒久平和の確立を達成するために不可欠であることを、再確認する。」
 これに反して、バイデン・尹共同声明は、2018年合意について一言も触れなかったのである。そして、北朝鮮政策に関して述べた内容は、簡単に言えば、国際的な制裁圧力と米韓合同の軍事圧力の強化という、2018年首脳合意以前の方針への回帰であった。
 軍事的側面では、共同声明は抑止力強化について具体的な記述に踏み込んだ。ハイレベルの拡大抑止戦略協議の復活、米韓合同軍事演習の規模と範囲の拡大に向けた協議の開始、米国の戦略兵器の必要に応じたタイムリーな配備の確認、などである。
 これらの合意に沿って、すでに歴然とした変化が現れている。4月に行われた10日間の合同訓練は実働部隊が参加しない机上の指揮所訓練であったが、6月上旬には、横須賀を母港とする米空母ロナルド・レーガンに韓国のイージス駆逐艦・世宗大王(セジョンデワン)が主力として加わった米韓空母打撃群合同演習が行われた。また、北朝鮮がミサイル発射を行ったときには迅速に米韓合同の軍事的反撃態勢をとるという新しい示威行動を始めた。これは、ミサイル発射に対して米韓のミサイル発射で応えるだけではなく、北朝鮮に対して圧倒的優位に立つ空軍力による空爆の示威へとエスカレートさせたものである[注8]。
 一方、経済制裁に関しては、首脳共同声明は「両首脳は今年の弾道ミサイル実験のエスカレーションは…明らかな国連安保理決議違反であると非難する」と述べ「すべての国連加盟国に、すべての安保理決議の完全履行を求める」と述べた[注9]。つまり、史上最強と言われる安保理の制裁決議を、国連加盟国すべてが履行すれば、北朝鮮は屈服するはずであるという、歴史的にはすでに失敗が証明されてきた願望に基づく方針を繰り返しているに過ぎない。

ミサイル発射を罰する安保理決議、弱まる妥当性
 後述するように、弾道ミサイル発射に対して制裁を課す安保理決議は、もともと説得力のある根拠に乏しい。それに加えて、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が国連安保理にもたらした政治的分断の拡大は、制裁決議の履行をますます困難にしている。
 5月26日、国連安保理は、米国が提出した新たな対北朝鮮制裁強化決議案(S/2022/431)を、13対2で否決した。中国とロシアが、近年の主張の延長であるが、一連の制裁決議では初めて拒否権を行使したからである。これを受けて6月8日、拒否権行使をめぐる議論を行うための史上初の国連総会が開催された。このような拒否権行使の是非を論じるための国連総会は、ロシアのウクライナ侵攻に対処するために開かれた2月25日の安保理が拒否権によって何ら行動できなかった事態を受けて、開催が制度化されたものである。すなわち、国連総会は、4月26日、拒否権行使があったときには、総会議長が10仕事日以内にその問題を協議するための総会を招集することを義務づけたのである[注10]。北朝鮮への制裁決議がこの最初の適用例となった。
 この総会では、ロシア、中国とともに北朝鮮も、それぞれの立場を表明した[注11]。例えば中国は、米国が北朝鮮の合理的な懸念を無視したことが現在の情勢の要因であり、制裁緩和や合同軍事演習の中止など、米国が実際に行動で対話姿勢を示す必要があると主張した。発言をした大多数の参加国は、過去の安保理決議に違反する北朝鮮に対する批判と各国の決議順守を要求した。にもかかわらず、冷静に議論に耳を傾けたとき、提案された制裁決議が問題解決のために有効ではないというロシアや中国の説明に、一定の説得力があることを否定することは難しい。今後、北朝鮮のミサイル発射に関して新しい制裁決議が安保理の拒否権で繰り返し否決され、そのたびに国連総会において同様な討論が行われるとすれば、制裁決議は適切さを欠いているという認識が、より多くの国に共有されてゆくと予想される。
 もともと、今日の国際社会において、ミサイル発射に対して安保理決議による制裁を加えることには限界がある。核兵器開発や核実験の問題とはちがって、ミサイルそのものを規制する規範的な国際合意は存在しないからである[注12]。
 国際社会におけるミサイル兵器の規制は、一般に、大量破壊兵器の運搬手段としてのミサイルに関わってのみ行われてきた。現在の国際社会におけるミサイル規制は、残念ながらそのような限界の中にある。よく知られているミサイル技術の管理レジーム(MTCR)もハーグ行動規範(HCOC)も同様な枠組みの中にある。MTCRは、ガイドラインにその目的を「大量破壊兵器運搬システム(有人航空機を除く)に寄与しうる移転を規制することによって、大量破壊兵器の拡散を規制する」と明記し[注13]、HCOCは、「大量破壊兵器を運搬する能力をもつ弾道ミサイルシステムの拡散を包括的に防止し、抑制する」ことを規範の原則として掲げている[注14]。したがって、ミサイル発射を規制する安保理決議の決定も、その限度の中に留まらざるを得ないであろう。
 北朝鮮に対する安保理制裁決議の場合においても、決議1718(2006)に始まって決議2397(2017)に至る10件の全て[注15]において、大きく言えばこのような文脈のなかに置かれていると言えるであろう。すなわち、全ての決議は、冒頭に「核兵器、化学兵器、生物兵器、及びその運搬手段の拡散が国際の平和と安全に対する脅威であることを再確認し」と述べ、決議全体の文脈を形成しているのである。
 しかし、北朝鮮に対しては、この文脈を超えて、核兵器運搬手段であるか否かを吟味することなく、ミサイル発射一般に制裁を課すことにつながる決議主文が採択されていった。それが可能になったのは、北朝鮮の核実験への非難とミサイル問題が、巧みに結び付けられてきたからであろう。この背景には、米国や日本による外交的働きかけが強く作用してきたと考えられる。
 ミサイル発射に自動的に制裁を課す文脈の形成は、2つの安保理決議によって行われており、そのいずれも北朝鮮によるミサイル発射ではなく、核実験が引き金になっていた。その他の8決議の内容は、この2つを踏襲して積み重ねられている。
 1つ目は、最初に採択された決議1718(2006)であり、北朝鮮の第1回核実験を契機として採択された。そして「DPRKは今後いかなる核実験も弾道ミサイルの発射も行ってはならない」と要求した。ここで弾道ミサイル一般が禁じられる流れが作られた。2つ目は、決議1874(2009)であり、北朝鮮の2回目の核実験を引き金として採択された。今度は「DPRKは今後いかなる核実験も、弾道ミサイル技術を用いたいかなる発射も行ってはならない」と禁止の範囲をさらに拡大させた。宇宙ロケット発射を含め、弾道ミサイル技術を用いる一切の発射を制裁の対象とする素地が作られた。
 このように国際社会で一般に禁止されず容認されている行動を、特定の国に対してのみ無条件に禁止することの妥当性は、常に検証される必要がある。ミサイル発射の場合、それに制裁を加えるとすれば、そのミサイルが大量破壊兵器の運搬手段であるか否かについての判断を下す公正なメカニズムが、困難であっても求められる。
 安保理には、周知の通り、国際の平和及び安全を維持するために、どのような非軍事的措置(国連憲章第41条)あるいは軍事的措置(同第42条)をとるかを決定できる大きな権限が与えられ(同第39条)、その「決定」は加盟国を拘束する(同第25条)。こうした大きな権限を有する安保理が下す決定の公正性は、制裁対象国ばかりでなく国際社会に対する影響力が大きい。したがって、安保理決議による規定は、国際社会にゆきわたっている規範の現状に即した公正なものでなければならず、大国の都合や一部の国の思惑で歪められるようなものであってはならない。
 さらに上記のような原則的な理由の他にも、実際的な矛盾も表面化している。
 すでに触れたように、5月25日と6月5日の北朝鮮の短距離ミサイル発射に対して、米韓が合同でミサイルを発射して即応体制を誇示した。また、昨年の9月15日には、北朝鮮が短距離ミサイルを発射したのと同じ日に、韓国が潜水艦発射弾道ミサイルの発射テストを行った。なぜ、北朝鮮のミサイル発射だけが制裁を受け、朝鮮半島における韓国や米国の同じ行為が許されるのか、公正な判断基準を求める国際社会の要求が、いっそう強まらざるをえない。北朝鮮のミサイル発射への制裁に関する説得力は、今後ますます失われるであろう。

共通の地域安全保障への取り組みこそウクライナの教訓
 バイデン政権も尹政権も、対北朝鮮政策に関して、今のところ、失敗が運命づけられている政策―経済制裁と軍事圧力―しか打ち出せていない。尹大統領は見返りの大胆な経済支援を強調しているが、北朝鮮が先に「完全非核化へのプロセスに真摯に取り組む」ことを条件にしており[注16]、この一方的な打ち出し方では北朝鮮の変化は期待できない。両首脳は、「DPRKに対する平和的、外交的解決に向けて対話の道は開かれている」[注17]と述べているが、本報告で繰り返し述べてきたように(例えば監視報告32、33)、北朝鮮は対話のための具体的な信頼醸成の措置(核実験とICBM発射のモラトリアム)をとったことに対して、米国が誠意を示す番だと主張してきた。この現状では、対話は実現しないであろう。結果として、北朝鮮は自衛のための核抑止力の強化を続けることになる。
 ここで、今後の進むべき方向を考えるために、米韓首脳共同声明に示されている一つの手掛かりに注目したい。それは「尹大統領とバイデン大統領は朝鮮半島の完全な非核化という共通の目標を繰り返し述べるとともに、この目的にむかって緊密なる調整を一層強めることに合意した」という一文である[注18]。一見、何の変哲もない一文であるが、「北朝鮮の完全な非核化」ではなく、「朝鮮半島の完全な非核化」と述べていることに重要な意味がある。尹大統領は、大統領就任演説においても、マドリッドにおけるNATO首脳会議における発言においても[注19]、「北朝鮮の非核化」と述べてきており、これまで一貫して「朝鮮半島の非核化」という目標を掲げていない。にもかかわらず、共同声明がこの文言を採択したのは米国の主張の反映と考えてよい。
 北朝鮮が否応なく核戦略強化を続けるとき、尹政権の背後にある韓国の保守勢力は、韓国自身の核保有の主張を強め韓国世論がそれに傾く危険がある。そうなれば日本にも波及する核のドミノの悪夢が始まる危険がある。バイデン政権としては、それを避けるためには韓国も含めた「朝鮮半島の非核化」に尹政権もコミットさせる必要があったであろう。
このように「朝鮮半島の非核化」が必要な目標であるとすれば、その方向で南北朝鮮と米国が首脳レベルで合意した2018年合意が依拠すべき基礎であることは、余りにも明らかであろう。
 述べてきたように、2018年の首脳合意は、米国、韓国、DPRKのいずれによっても破棄されていない。必要なのは、それを生かす新しい構想とイニシャチブである。
 ロシアのウクライナへの軍事侵攻を好機として、東アジアにおいては中国の台湾への軍事侵攻の可能性の議論を煽り、それを理由とした軍事力の強化、防衛予算の増強の動きが強まっている。しかし、それと同時にそのような軍事力を糾合する同盟の論理こそ、ウクライナにおける戦争を招いているという議論もまた強まっている。東アジアにおいては、今回のウクライナ侵攻が始まるより以前から、米国がリードする中国包囲戦略は始まっており、米国の朝鮮半島政策の背後にもその力学が働いていることは否定できない。このような状況を考えると、2018年の首脳合意は、朝鮮半島のみならずこの地域における軍事的緊張のさらなる激化を抑え、関係国が受け入れることのできる共通の安全保障システムを構築するための貴重な基礎的合意ととらえ返すこともできるであろう。
 その意味において、我々は2018年首脳合意を基礎にして、関係国が北東アジア非核兵器地帯の設立に向かうべきであることを改めて提案する。朝鮮半島と日本を含む領域を非核兵器地帯とし、それをとりまく米国、ロシア、中国が安全の保証を約束するという、3+3スキームを基礎に据えて、それを実現するための包括的アプローチに関して多くの専門家による研究がある[注20]。
 この関係国は、2003-2008年の6か国協議の構成国でもあることを考えると、6か国協議がこのことを議論する最適の場であることも、多くが一致するところであろう。また、2010-2011年に6か国協議の再開をめぐって、オバマ政権の米国と中国が協力し合った歴史もまた想起すべき教訓である。そのとき中国は、軍事的衝突で緊張を高めていた保守政権の韓国と北朝鮮の両国と個別に交渉し、3段階のプロセスを経て6か国協議に復帰する道筋をつけた[注21]。今日においても、米国と中国のどちらかのイニシャチブによる協力、歴史にならえばとりわけ中国のイニシャチブ、に期待するところが大きい。(梅林宏道、前川大、渡辺洋介)


注 1 「主体主義朝鮮の偉大な軍事力の目覚ましい示威:新型ICBM の発射実験成功」、『朝鮮中央通信』英語版2022年3月25日。
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
注 2 「朝鮮労働党第8期中央委員会第6回政治局会議が開催される」、『朝鮮中央通信』英語版2022年1月20日。
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
注 3 たとえば、「北朝鮮、ミサイル発射 今年9回目」『朝日新聞デジタル』、2022年3月6 日。https://digital.asahi.com/articles/DA3S15224936.html。また、このような論調の存在は研究者の指摘にもある。Richard WEITZ, "The Military Logic Behind North Korea’s Missile Medley,” 38 NORTH, March 14, 2022. 
注 4 「朝鮮型社会主義建設を新たな勝利に導く偉大な闘争方針──朝鮮労働党第 8 回大会で行った金正恩委員長の報告について」、『朝鮮中央通信』英語版、2021年1月9日。
http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。
日本語抜粋訳:ピースデポ・アルマナック刊行委員会『ピース・アルマナック 2022』(緑風出版)、127 ページ。
注 5 注 4 と同じ。
注 6 米韓首脳共同声明(2022 年 5 月 21 日) 。
注 7 米韓首脳共同声明(2021 年 5 月 21 日)。
注 8  2022年5月25日の北朝鮮のミサイル発射に対して、同日、30機の韓国空軍のF15K が爆弾・ミサイルをフル搭載してエレファント・ウォークを行った。
David Choi & Hana Kusumoto, "US, South Korea respond to North Korea’s latest missile tests with launches of their own," STARS AND STRIPES, May 24, 2022。 
Choe Sang-Hun, "North Korea Launches Suspected ICBM and Two Other Ballistic Missiles," New York Times, May 24, 2022 
また、2022年6月5日の北朝鮮のミサイル発射に対して、6月7日、16機の韓国空軍戦闘攻撃機(F35A、F15K、KF16)と 4 機の米空軍 F16が黄海において攻撃型の編隊飛行を行った。
David Choi, "Allied fighter formations show resolve in wake of North Korean missile tests," STARS AND STRIPES, June 7, 2022
注 9 注 6 と同じ。
注 10 A/RES/76/262
注 11 “General Assembly Holds Landmark Debate on Security Council’s Veto of Draft Text Aimed at Tightening Sanctions against Democratic People’s Republic of Korea,” UN Meetings Coverage, GA/12423, 8 Jube 2022 
注 12 例えば、『すべての面におけるミサイル問題:国連事務総長報告』(国際連合、2003年、13頁)は、「現在、ミサイルに関するすべての点における懸念に具体的に取り組んだ普遍的に受け入れられた規範あるいは法的文書は存在しない」と結論づけている。 
注 15  梅林宏道「北朝鮮の核兵器―世界を映す鏡」(高文研、2021年9月)にまとめた表がある。147-149 ページ。
注 16  Yoon Suk Yeol, “Inaugural Address by President Yoon Yeol,” May 10, 2022 
注 17 注 6 と同じ。
注 18 注 6 と同じ。
注 19 Lee Haye-ah, “Yoon calls for int’l resolve to denuclearize N. Korea,” YONHAP NEWS, June 30, 
2022
注 20  Michael Hamel-Green, "An Alternative to Nuclear Deadlock and Stalled Diplomacy – Proposals, 
Pathways, and Prospects for the Northeast Asia Nuclear Weapon Free Zone," A Working Paper presented to The 75th Anniversary Nagasaki Nuclear-Pandemic Nexus Scenario Project, October 31–November 1, and November 14–15, 2020 (Japan Time)
注 21  注 15 と同じ、138-139 ページ。

2021/10/29

監視報告 No.34

 監視報告 No.34  2021年10月29日


§北朝鮮問題を考えるとき、まず手に取るべき一冊
――書評:『北朝鮮の核兵器—世界を映す鏡』(梅林宏道、高文研、2001年)
             山口響(長崎大学核兵器廃絶研究センター客員研究員)

 本書は、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の核兵器問題について、北東アジア非核兵器地帯の提唱などで実績があり、本「監視報告」でも健筆を揮っている梅林宏道氏が包括的に論じたものである。
 各章の細かい説明に移る前に、本書の特長をいくつか挙げてみたい。
 第一に、1950年代以降の北朝鮮の核兵器をめぐる動きが本書一冊によって通観できるという点だ。北朝鮮に関する書籍(とりわけ、その核・ミサイル開発の危険性を強調するもの)は多く出されているが、時系列的にきちんと事情を整理している研究はそう多くない。しかも、単なる年表的、百科事典的な情報の羅列ではなく、後述するひとつの「視座」がそこに貫かれていることが、本書を特異なものたらしめている。
 第二に、いま述べたばかりの点と関連するが、北朝鮮の核・ミサイル「開発」にばかり焦点を当てているのではなく、それを取り巻く国際的な情勢、とりわけ米国の動向を中心に検討している点である。したがって、北朝鮮が単線的に核兵器やミサイルの開発に邁進してきたという見方は本書では排除され、とりわけ米朝関係という文脈の下でのジグザグな道筋がむしろ強調されることになる。
 第三に、1960年代以降の日本の社会運動の世界に身を置いてきた筆者が、韓国民主化運動を初めとするアジアの民衆運動と触れあってきた経験の中から、本書が構想されているという点である。
 * * * *
 これらのことを確認したうえで、各章の内容を要約していきたい。
 序章には「視座を正す」というタイトルが与えられている。北朝鮮の核問題を考えるにあたっての視座のゆがみとは、梅林によれば、北朝鮮の「脅威」ばかりを言いつのって、米国やロシアなど核大国の核兵器の危険性を正確に認識しないことである。
 ただし、そのことによって北朝鮮を免罪する意図は梅林にはない。「核兵器という究極の暴力が国家安全保障に必要だと主張し続けている核兵器国」(p.33)、とりわけ米国が北朝鮮を敵視し、あまつさえその体制を転覆しようとすら試みていることが、北朝鮮の核武装の背景にあるというしごく当たり前の認識を示しているだけである。米国のシュレジンジャー元国防長官の言葉を引きながら、米国の核抑止力は毎日「使用」されているとする筆者の指摘は評者には新鮮だった。なお、本書の副題が「世界を映す鏡」とされているのは、北朝鮮が、核兵器を毎日「使用」している核兵器国と同じ土俵に乗って核開発を進めようとしているためである。
 「視座を正す」べきとの梅林の呼びかけは、日本のありようとも関わっている。すなわち、北朝鮮の核開発の背後には、「1945年の植民地支配からの解放と同時に始まった南北分断、そして朝鮮戦争へと突き進んだ歴史」(p.21)がある、という認識だ。そのために梅林は、北朝鮮核問題とは一見関係なさそうな、1948年の済州島における民衆弾圧「4・3事件」の経験について、序章であえて長々と紹介している。自らの植民地主義を清算していないどころか、現在は米国の「核の傘」の下にすらある日本が、北朝鮮核問題の原因の一部であることは疑う余地がない。
 さて、これらの視座を与えたうえで、本書は第1章から第5章で時系列的に北朝鮮核問題の動向を追っている。
 第1章は、初期の核開発(1950年代~1992年)を整理する。北朝鮮は1950年代末以降、ソ連の支援を受けながら原子力開発を進めるが、ソ連は北朝鮮への発電用原子炉供給を望まず、北朝鮮が核不拡散条約(NPT)に加入するのはようやく1985年になってからのことだった。またこの間、北朝鮮は独力で黒鉛減速炉の開発を進めたが、当時にあっては発電が主目的であったと梅林はみている(p.44)。
 「束の間の春へ」と題された第2章は、1993年から2000年にかけての事情を、1994年核危機に焦点をあてつつ論じている。この直前の時期にあたる1992年前半に、北朝鮮と国際原子力機関(IAEA)との保障措置協定と、「朝鮮半島のための南北共同宣言」がそれぞれ発効していた。しかし国際社会は、後者を軽視して、IAEAを通じてのみ北朝鮮の核開発を阻止しようとの歪みを持っていたため、北朝鮮による1度目のNPT脱退宣言(1993年3月)につながってしまう。米国は北朝鮮に対する戦争を真剣に検討するものの、カーター元米大統領の訪朝を一つのきっかけとして事態の打開策が見出され(いわゆる94年危機)、米朝枠組み合意(1994年10月)、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)協定合意(1995年3月)へとつながっていく流れについては比較的よく知られていると思うので、ここでは詳述しない。
 重要なのは、この時点では北朝鮮に核武装の意図はなく、「米国の脅威を除去するために米朝関係を構築するという戦略目標のために、将来の核開発の可能性を臭わし続けるという外交路線を取り始めた」(p.61)と梅林が判断していることである。
 1998年の「テポドン・ショック」などがありながらも、KEDOは少しずつ成果を挙げつつあった。これを反転させたのが、2001年の米ブッシュ政権の登場である。「米ネオコン政治と6か国協議」と題する第3章は、その点を取り扱う(2001年~2008年)。クリントン期の米朝枠組み合意を「失敗」と断じる米政府内の強硬派は、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難し、それが2003年1月の北朝鮮による2度目のNPT脱退宣言につながる。
 この後米国が、イラクの場合とは異なって、暴力による北朝鮮の体制転覆を試みるのではなく、いわゆる「6か国協議」の枠組みに進むことはよく知られているので、やはり詳述は避ける。本書でも、2005年の「9・19共同声明」に至る流れ、米政府内の強硬派が巻き返して対北金融制裁などが発動される流れ、2006年の北朝鮮による初の地下核実験、そうした紆余曲折を経つつも6か国協議の枠組みは継続し、北朝鮮の非核化に向けた粘り強い国際交渉が続けられていたことが手際よく整理されている。
 北朝鮮の核武装が成った直後の2009年~2017年の事情については、「並進路線と戦争抑止力」と題された次の第4章において扱われている。この時期、北朝鮮は第2回から第6回(現時点では最後)までの核爆発実験を行っている。
 2009年からの米オバマ政権第一期において、北朝鮮との対話はほとんど進まなかった。その理由を梅林は次の3点に整理する(p.129)。
①オバマ政権のメッセージが、高みに立つ者の恩恵的ニュアンスを帯びており、北朝鮮の敏感なプライド意識への配慮に欠いていたこと。
②人工衛星開発に進もうとする北朝鮮の宇宙開発路線が国際社会において否定されたこと。
③韓国において10年ぶりの反共・保守政権が誕生したこと(李明博、朴槿恵政権)。
 2013年3月、北朝鮮は、経済開発と核戦力建設を同時に実行する「並進路線」を打ち出す。こうしたこともあって、2013年からの第二期オバマ政権は、(オバマ自身がそう呼んだわけではないが)いわゆる「戦略的忍耐」の態度をとって、北朝鮮との交渉にきわめて慎重になった。
 2017年に登場した次の米トランプ政権が、その最初期において、「炎と怒り」「完全に破壊」発言などで北朝鮮の激しい反発を招いたことは、あらためて評者が説明するまでもないだろう。
 第5章「希望と期待」は、その後から現在に至る時期を扱っている。2017年5月に韓国に文在寅政権が生まれ、それと近い時期に北朝鮮の並進路線が終了する(2018年)という南北関係の「巡り合わせ」があった(後者に関して梅林は、「先軍政治」にならって、「先経済政治」に移行したと評している)。このことが、2018年4月の南北首脳による「板門店宣言」、同年6月のトランプ米大統領と金正恩国務委員長による「シンガポール共同声明」へとつながる。後者は、抽象的ながらも「米朝関係の正常化」「朝鮮半島における平和体制の確立」という2つの大目標に合意しており、今後の交渉の基礎になるとして梅林は高く評価する。しかし、その後トランプ政権は「ビック・ディール」という高いハードルを設けるようになり、交渉はうまくいかなかった。「あとがき」にあるように、バイデン新政権はまとまった北朝鮮政策を打ち出しておらず、今後のゆくえは見通せない。
 さて、最後の第6章「核・ミサイル技術の現状」は、技術的な観点から北朝鮮の開発・保有する核兵器やミサイルの現状を整理しており、きわめて便利である。
 * * * *
 最後に、本書への注文と今後の梅林氏の仕事への期待などをいくつか述べて、書評を閉じることにしたい。
 第一に、クリントン政権は別として、米国の共和党政権時(ブッシュおよびトランプ)に対北交渉が進み、対話に熱心であるはずの民主党のオバマ政権時にかえって交渉が進まなかったことの理由をどうみればいいのだろうか。ブッシュ期に関しては、対話路線をつぶそうとする強硬派(ネオコン)の反撃という米政府内での角逐は本書でもよく描かれているが、それでもなお全体としては、6か国協議を中心とした対話路線をブッシュ政権が崩さなかったことの理由はどこにあるのだろうか。反対に、オバマ政権が、とくにその第二期に「戦略的忍耐」路線を取って北朝鮮との交渉にあまり関心を示さなかったのはなぜか。北朝鮮の核・ミサイル開発が既成事実として一定程度進んでしまったという「時間差」に、オバマの不熱心さの原因は求められるのだろうか。さらにいえば、トランプ大統領の当初のレトリカルな対北朝鮮中傷が米朝サミットへと急展開していった流れはどうみればよいのだろうか。
 もちろん、300ページ程度の書物にこれらの問題の解決をすべて求めるのは「ないものねだり」であろう。ここで評者が強調したいことは、そのような今後考究すべき問いが、北朝鮮核問題を手際よく通時的に概観した本書の記述の中にたくさん詰まっているということである。
 第二に、日本がこの問題に深くかかわっているという視座の重要性を示しているにもかかわらず、日本政府の実際の動き方について本書ではほとんど触れられていない。おそらくこのことは、梅林自体の問題というよりも、日本政府が北朝鮮核問題については独自の外交方針をほとんど持っていないことの反映なのだろう。いや、安倍政権の「圧力」路線に示されるように、北朝鮮との交渉にほとんど関心を示していないという点で、時として実利的な米外交とは異なって、もしかすると日本はかなり「独自」の線を行っているのかもしれない。であれば、日本語の書物としては、もう少しその辺りに光を当ててもよかったのではないか。日本外交が「不在」であるとするのならば、そのこと自体の理由は追究するに値する。
 第三に、梅林よりはるかに下の世代の人々が本書をどう読むのだろうか、ということが気にかかる。本書評の冒頭で紹介したような梅林のライトモチーフは、1960年代から70年代にかけての日本の社会運動をくぐり抜けてきた人々にはすんなりと理解されるものだろう。他方で、21世紀以降に日本で精神形成を遂げてきた者たちは、「北朝鮮は悪、それに振り回される国際社会」という基本構図を骨の髄まで叩きこまれている。また、在留外国人の中に占める朝鮮人の割合が減少してきて、朝鮮と日本との関係という古くて新しい問題に接する場面も少なくなってきている。いやむしろ、そういう発想・世代の人々に向けて、主流とは異なる視座から北朝鮮核問題を眺めよ、と指摘するのが、本書の役割というべきか。
 本書は、このような今後への問いを触発するという意味においても、北朝鮮核問題を深く考えたい読者がまず手に取るべき一冊だと言えよう。なお本書は、「梅林宏道の仕事の深層」と題されたシリーズの第1巻にあたっているという。今後の刊行が楽しみだ。
(見出しは編集部)

2021/10/22

監視報告 No.33

監視報告 No.33  2021年10月18日

§ バイデン政権が呼びかける前提条件なしの米朝対話は提案にはならない。経過を踏まえた踏み込んだ提案が必要だ

 9月21日、バイデン大統領は国連総会の演説において「朝鮮半島の完全な非核化を目指して真剣で持続的な外交を追求する」、また「朝鮮半島及び地域の安定性を高め、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮)人民の生活改善をもたらすような具体的な約束をともなう計画」を追求すると述べた[注1]。そこには計画の具体性を示すそれ以上のメッセージは含まれていなかった。にもかかわらず、それ以後のバイデン政権のDPRKに関するコメントに小さな変化が現れた。それまでの「いつでも、どこでも北朝鮮と会う準備ができている」という常套句に加えて、「具体的な提案を行っている」という文言が付け加わったのである。

「いつでも、どこでも」というフレーズは、米国のソン・キム北朝鮮担当特使が就任後最初に韓国を訪問したときに、北朝鮮への対話への復帰を呼びかけたときの言葉である。6月21日、次のように述べた[注2]。

「われわれは、DPRKが、どこでも、いつでも、前提条件なしに会うというわれわれの呼びかけと申し入れに対して、肯定的に応えてくれるよう期待を持ち続けている。」

この言葉は、後述するように、ハノイ会談以後の米朝交渉の経緯を考えると不適切であったにもかかわらず、ほぼ2か月後に韓国を訪れたときにも、ソン・キム特使は同じセリフを繰り返した[注3]。さらには、米大統領府においても、米国務省においても、そのフレーズが繰り返された。ネッド・プライス国務省報道官は7月1日に「われわれは、いつでも、どこでもDPRK代表と会う意思があるというわれわれの明確な意思を述べてきた」と述べ、9月24日にも、「述べてきたように、前提条件なしにDPRKと会う準備がある」と述べた[注4]。ジェン・サキ大統領府報道官も、8月31日、「われわれは、ドアを開けてきたし、はっきりとわれわれのチャンネルを通して接触を続けてきた。…われわれの申し入れは変わらず、いつでも、どこでも、前提無しに会うということだ。」[注5]
 ところが、バイデン大統領の国連演説以後、米政府の発言に「具体的な提案」という文言が付け加わるようになった。たとえば、10月1日、サキ報道官は「われわれは北朝鮮と協議するため具体的な提案をした。しかし、今日まで反応はない」[注6]と述べ、10月7日、プライス報道官は、「どこでも、いつでも、前提無しに」のフレーズを繰り返したのち、「われわれはメッセージの中で、北朝鮮に対して協議するための具体的な提案をした。われわれは我々の呼びかけに彼らが肯定的に応えることを希望している」[注7]と述べた。

 現在、具体的な提案が何を意味するのか、また、実体があるのかどうかさえも、明らかではないが[注8]、このような経過から、日本や欧米では多くの市民には米朝交渉のボールが北朝鮮側にあるかのように思われている。

 しかし、非核化をテーマとする米朝交渉に関する北朝鮮の立場は明白であろう。
 北朝鮮にとって、戦争状態にある米国への抑止力として開発した核兵器を放棄するには、安全の保証が必要になる。監視報告でも繰り返し述べてきたが[注9]、北朝鮮は、核兵器あるいは核開発の放棄を国際社会と約束する際、必ず相手側には北朝鮮が侵略されないという安全の保証や、関係改善などに向けた取り組みを約束させてきた。繰り返すまでもないことであるが、ドナルド・トランプ前大統領とシンガポールで臨んだ史上初の米朝首脳会談でも、金正恩国務委員長(当時)が「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた責務を再確認するのと同時に、トランプに「北朝鮮の安全の保証」を確約させ、その上で「新しい米朝関係の構築」、「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築」、「朝鮮半島の完全な非核化」、「米兵の遺骨回収と返還」に向けて共に取り組むことで合意した[注10]。
 2019年2月にハノイで行われた2回目の米朝首脳会談では、安全の保証の第一歩として北朝鮮は制裁解除を求めたのに対して米国が北朝鮮に全ての核兵器と核施設の廃棄を要求したため、首脳会談は何の成果も残すことができなかった。北朝鮮側が米国の要求に応じられなかったのは、米国が約束した安全の保証や関係改善に向けた米国の姿勢について、全幅の信頼を置くことができなかったからだ。北朝鮮としては、当時の米国との信頼関係の度合いの中で取ることができる「最大の非核化措置」として、「寧辺(ニョンビョン)地区のプルトニウムとウランを含む全ての核物質の生産施設を、米国専門家の立会いのもとで、両国技術者の共同作業として永久に、完全に廃棄」し、「核実験と長距離ロケット発射実験を永久に中止する」ことを文書で「確約」するという「現実的」な提案を行い、「民需経済」や「人民生活に支障を与える項目」の制裁解除を米国に求めた[注11]。それに対して米国政府は「オール・オア・ナッシング」の立場で合意を拒否した。

 それ以降、北朝鮮は米国に関係改善の意思はなく、米国の敵視政策が続くという判断に立つようになった。そして、経済制裁の解除を求めるのではなく、経済制裁の継続を前提とした経済建設に取り組む路線をとった。ちなみに、金与正朝鮮労働党中央委員会副部長によると、2019年6月に行われた板門店(パンムンジョム)における3回目の米朝首脳会談で金正恩がトランプに伝えたのは、このような北朝鮮の立場だった[注12]。2019年末の朝鮮労働党中央委員会総会において、金正恩は米国の対北朝鮮敵視政策が終わることはないと判断し、自力で経済発展を目指す「正面突破戦」を宣言するなど、国家の安全を核による抑止力で担保し人民の生活を向上させることに集中する方針を打ち出した。
 このように、北朝鮮は自衛力の担保、すなわち北朝鮮の主張に立てば、米国の脅威に見合った戦争抑止力の強化を維持しつつ、経済建設に集中するというのが、現在の北朝鮮の立場である。したがって、北朝鮮にとって米朝交渉に第一義的な関心はない、と言えるであろう。

 とはいえ、COVID19パンデミックと気候変動下の自然災害の増加の中で経済建設に集中しようとする北朝鮮にとって、侵略の憂いのない安定した朝鮮半島の国際環境の必要性はその前提条件となるであろう。2016年の「国家経済発展5か年戦略」の失敗を自認したうえで、2021年1月の党大会で立てられた「国家経済発展5か年計画」の成功は、金正恩体制にとって至上命令となる課題である。そのための前提となる、緊張が緩和した国際環境を整えることは、北朝鮮にとっても望むところであるに違いない。ここに米国が積極的に取り組むべき外交の糸口がある。

 北朝鮮は朝鮮半島の平和と非核化に向けた米国との交渉についても道は閉ざしていない。2021年1月の第8回労働党大会において、金正恩が「新しい朝米関係樹立のキーポイントは、アメリカが対朝鮮敵視政策を撤回するところにある」「今後も力には力、善意には善意の原則に基づいてアメリカに対するであろう」[注13]と述べたことはよく知られている。

 いま米国が示すべきものは、「いつでも、どこでも、前提条件なしに」というような呼びかけではない。2018年以来の米朝交渉の経過を踏まえた、信頼醸成のための一方的措置を含む具体的提案である。一方的措置の必要性の理由については監視報告32で述べたので繰り返さないが、北朝鮮がすでにとって現在も継続している措置に応えることが理にかなっている。
 本論では、米国に求められる具体的提案に関連して、米国が考慮すべき2つの点を指摘したい。1つは米韓合同演習中止に関係する提案であり、もう1つは経済制裁緩和に関係する提案である。最近、金正恩総書記は「米国はしばしば我が国を敵視していないとシグナルを送っているが、それを信ずるに足る行動は何も示していない」(2021年10月11日、国防発展展覧会での演説[注14])と述べたが、この2点は、米国の敵視政策について、金正恩の主張の根拠を払拭するために欠かせないものであろう。
 北朝鮮は米国と韓国に対して合同軍事演習を中止するよう繰り返し求めている。8月10日から2段階で行われた合同軍事演習も、北朝鮮政府が警告する中で行われた[注15]。規模を縮小させたとしても、北朝鮮にとって、外部勢力である米国の軍隊が朝鮮半島で演習を行う限り、それは米韓が北朝鮮を侵略するための予行演習とみなさざるを得ないであろう。朝鮮戦争が正式に終わっていない現在においては、なおさらのことである。朝鮮国連軍との関係および米韓相互防衛条約との関係における米韓合同演習の必要性とその在り方について、「敵視政策の撤回」をふまえた変更が正式に検討されるべきである。この問題は、南北で結ばれた2018年「9月平壌宣言」の「軍事分野における合意書」に謳われた南北の緊張緩和と将来の段階的軍縮に関する合意の持続と発展のためにも、避けることのできない米韓共同の課題である。具体的な変更の形についての結論に時間を要するのであれば、検討の開始を公式に表明して、検討期間における合同演習のモラトリアムを表明するべきであろう。
 米国がもはや北朝鮮に対して敵視政策をとっていないことを示しうるもう1つの現実的な手掛かりは、金星(キムソン)DPRK国連代表が、開催中の国連総会において行った一般演説の中に述べられている[注16]。けっして新しい主張ではないが、彼は国連の公平と公正を強く要求した。現在の国連安保理においては、たとえば、多くの国において行われている短距離ミサイルの発射実験について、北朝鮮が行った場合のみが「平和に対する脅威」として非難され、場合によってはさらなる経済制裁の強化を招く状況が存在している。2006年から2017年にかけて行われた北朝鮮の核実験、ミサイル実験に対して採択された安保理制裁決議の是非をめぐる議論は、ここではさておく。問題は、2018年4月に北朝鮮が核実験と長距離ミサイル実験の中止を自主的に決定し、今日まで3年半にわたってそれを守っている現実がある。のみならず、朝鮮半島の一方の当事国である韓国がSLBM実験の成功を誇示する[注17]という新しい情勢も現れている。そんな中で現行の対北朝鮮制裁決議の妥当性が再検討されるべき時期を迎えていることは、世界の多くの良識が認めるところであろう。
 この問題については、ロシアと中国がすでに安保理で非公式に提起していると伝えられているが[注18]、バイデン政権が、制裁緩和に向かう、より積極的な具体案を提案するリーダーシップをとることができるはずである。それは、米国の敵視政策からの転換を示す極めて適切な行動となるであろう。幸い、米国を含む多国間協議の合意文である「CTBT25周年記念宣言」(2021年9月22日)は、北朝鮮に安保理決議の順守とCTBTへの署名と批准を求めるに当たって、安保理決議に含まれている「見直し条項」を指摘している[注19]。すなわち、「DPRKの行動を継続的に監視しつつ、DPRKの順守状況に照らして必要であれば措置の強化、変更、中止、あるいは解除を行う用意がある…」という条項である。米国は国際社会がこの条項に注目している機会を活用して積極的な行動をとるべきである。(前川大、梅林宏道)

注1 バイデン大統領の第76回国連総会における演説。2021年9月21日。

Remarks by President Biden Before the 76th Session of the United Nations General Assembly | The White House

注2 “New U.S. envoy for North Korea looks forward to ‘positive response’ on dialogue”、『ロイター通信』、2021年6月21日。

https://www.reuters.com/world/asia-pacific/new-us-envoy-north-korea-huddle-with-skoreans-japanese-2021-06-20/

注3 “U.S. envoy says no hostile intent toward North Korea, calls for talks”、『ロイター通信』、2021年8月23日。

https://www.reuters.com/world/asia-pacific/us-skorea-envoys-discuss-jumpstarting-talks-with-north-korea-2021-08-23/

注4 米国務省プライス報道官の記者会見。2021年7月1日および2021年9月24日。

https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-july-1-2021/#NorthKorea

https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-september-24-2021-2/

注5 米大統領府サキ報道官の記者会見。2021年8月31日。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/08/31/press-briefing-by-press-secretary-jen-psaki-august-31-2021/

注6 米大統領府サキ報道官の記者会見。2021年10月1日。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/10/01/press-briefing-by-press-secretary-jen-psaki-october-1-2021/

注7 米国務省プライス報道官の記者会見。2021年10月7日

https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-october-7-2021/

注8 2021年10月15日、「具体的な提案」の中味を尋ねた記者の質問に対するプライ報道官の回答は曖昧を極めた。

https://www.state.gov/briefings/department-press-briefing-october-15-2021/#post-284428-NorthKorea2

注9 監視報告No.12、監視報告No.32。

それぞれ、https://nonukes-northeast-asia-peacedepot.blogspot.com/2019/07/no.html

https://nonukes-northeast-asia-peacedepot.blogspot.com/2021/06/no32.html

注10 シンガポール米朝首脳共同声明(2018年6月12日)。

https://trumpwhitehouse.archives.gov/briefings-statements/joint-statement-president-donald-j-trump-united-states-america-chairman-kim-jong-un-democratic-peoples-republic-korea-singapore-summit/

注11 李容浩外相の記者発表。『ハンギョレ』に全文(韓国語)。2019年3月1日。

http://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/884116.html

『核兵器・核実験モニター』565号に日本語訳。

http://www.peacedepot.org/wp-content/uploads/2019/04/nmtr565.pdf

注12 “Press Statement by Kim Yo Jong, First Vice Department Director of Central Committee of Workers' Party of Korea”、『朝鮮中央通信』英語版、2020年7月10日。

http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付で検索。

注13 「朝鮮労働党第8回大会で行った金正恩委員長の報告について」、第3章「祖国の自主統一と対外関係の発展のために」『朝鮮中央通信』英語版、2021年1月10日。

http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。

注14  KCNA、2021年10月12日。http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付により検索。

注15 “Vice Department Director of WPK Central Committee Kim Yo Jong Releases Press Statement” 、『朝鮮中央通信』英語版、2021年8月1日。

http://www.kcna.co.jp/index-e.htm から日付で検索。

注16 Kim Song, “Statement by Head ofthe DPRK Delegation H.E. Ambassador Kim Song, Permanent Representative of the Democratic People’s Republic of Korea to the United Nations at the General Debate of the 75 th Session of the UN General Assembly,”

https://estatements.unmeetings.org/estatements/10.0010/20200929/azzQgcBAMYqv/WaUGJrE2AJvT_en.pdf

注17 「文大統領『ミサイル増強、北挑発への確実な抑止力』 SLBM発射実験を視察」、『聯合ニュース』、2021年9月15日。

https://jp.yna.co.kr/view/AJP20210915004900882

注18 「国連安保理、中ロ提案の北朝鮮制裁緩和巡り30日に非公式協議」、『ロイター通信』、2019年12月30日。

https://jp.reuters.com/article/northkorea-usa-un-idJPKBN1YY01Q

注19 「CTBT25周年記念宣言」第8節。CTBT-Art.XIV/2021/WP.1

https://www.ctbto.org/fileadmin/user_upload/Art_14_2021/CTBT-Art.XIV-2021-WP.1.pdf

2021/06/12

監視報告 No.32

監視報告 No.32  2021年6月12日


§ 米朝交渉再開のためには、米国がまず信頼醸成の行動をおこす番だ、しかも一日も早く。


 本日、6月12日はシンガポールにおける2018年米朝首脳共同声明から3年目の記念日にあたる。米国にバイデン政権が発足して初めての記念日でもある。
 そのバイデン政権の対北朝鮮政策が4月末に固まった。詳細は公表されていないが、「調節された現実的アプローチ」で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との外交を模索し、「朝鮮半島の完全な非核化」を目指すのだと言う[注1]。政策見直し作業完了後の5月21日に行われた米韓首脳会談では、両首脳は「板門店(パンムンジョム)宣言やシンガポール共同声明など、南北朝鮮間や米朝間での約束に基づく外交と対話が、朝鮮半島の完全な非核化の達成と朝鮮半島の恒久的な平和構築に不可欠であることを再確認した」[注2]。バイデン政権が、北朝鮮が非核化を誓うとともに米国も北朝鮮の安全の保証を約束し、さらに両国が新しい米朝関係を構築することを約束した過去の合意を尊重する姿勢を示したことは、出発点として高く評価できる。
 しかし米朝双方には、相手に対する不信感が積み重なっており、朝鮮半島の非核化と平和に向けて具体的に動き出すためには、如何にしてお互いの不信感を払拭するかが重要になる。2018年以来の経過からすると、米朝の信頼関係構築のための行動は、米国政府が先に取る必要がある。最初の行動が遅れれば遅れるだけ、不信の悪循環が再発するリスクが増すと考えられ、一日も早い米国の行動が求められる。

 5月21日の米韓首脳共同声明が言及した板門店宣言[注3]は、2018年4月に韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩委員長(当時)が署名した共同宣言であり、「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた努力と共に、休戦状態にある朝鮮戦争を終結させて戦争当事国による「恒久的な平和構築」に向けた協議を推進すること、敵対行為の全面的な中止、相互不可侵の再確認などで合意した。また、シンガポール共同声明[注4]は、史上初の米朝首脳会談で米国のドナルド・トランプ大統領(当時)と金正恩が合意に達した文書であり、まず、トランプが「北朝鮮の安全の保証」を約束し、金正恩が「朝鮮半島の完全な非核化」に向けた責務を再確認するとの前提を述べた。次に両首脳は、「新たな米朝関係の確立が、朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると確信し、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進できることを認識し」と述べて信頼醸成の重要性を指摘した。そのうえで、次の4項目の合意を行った。すなわち、「新しい米朝関係の構築」、「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築」、「朝鮮半島の完全な非核化」、「米兵の遺骨回収と返還」の4つである。
 米朝枠組み合意(1994年)や6か国共同声明(2005年)など、これまで北朝鮮が合意した朝鮮半島の核に関する主な合意にも共通することだが、北朝鮮政府は、米朝の関係改善や北朝鮮への不可侵、朝鮮半島の平和体制構築など、北朝鮮の安全が担保されることを条件に、核開発や核兵器の放棄に合意してきた。
 ベトナム・ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談(2019年2月)の失敗以降、北朝鮮政府は米国との交渉を頑なに拒んでいる。その場合でも、北朝鮮は米国政府が敵視政策をやめれば協議に応じる用意があることを繰り返し示唆してきた[注5]。バイデン政権が米朝の関係改善や朝鮮半島の平和体制の構築を約束した過去の合意を尊重するということは、米国政府が対北朝鮮敵視政策を撤回するということにもつながる。このことが明確になれば、ハノイ以来停滞している米朝交渉が再開される可能性は高い。
 ただし、これまで70年以上の長い歴史において敵対してきた米朝間において、朝鮮半島の非核化と平和をめぐる過去の交渉過程においても、お互いが不信感をいっそう強めてきている。シンガポール共同声明でも謳われているように、「相互の信頼醸成」が交渉促進の鍵であるとすれば、先ず、シンガポール共同声明が生まれた2018年以後の歴史を踏まえて、不信のもつれを解いて行く姿勢が必要であろう。以下に述べるように、その経過を冷静に分析するならば、米国がまず行動を起こすべき順番にある。


2018年以降を振り返ろう。
 まず、4月20日、北朝鮮は南北首脳会談、米朝首脳会談に臨む国内措置として大きな行動を行った。信頼醸成を狙った一方的な第一歩と言っていいだろう。北朝鮮の統治機構の中では実質的最高の決定機関ともいうべき党中央委員会総会(第7期第3回総会)において、「全党および国家のすべてのエネルギーを社会主義経済の建設に集中する」という新しい方向性を打ち出したうえで、金正恩は翌日(4月21日)からの核実験の中止、ICBM発射実験の中止、さらに、核実験中止を裏付けるための核実験場の解体を決定した。核実験場の解体はCNNなどの海外メディアを招待して5月24日に3坑道を爆破することによって実行した。爆破の実態について専門家の検証が行われていないことについては、シンガポール会談後の10月7日のポンペオ国務長官の平壌訪問の際に、金正恩は専門家を核実験場に招待して現地検証させることを提案した(その後の米朝交渉の行詰りで実現していない)。
 シンガポール会談においては、金正恩はトランプにICBM発射テストの再開をしない措置の証として東倉里(トンチャンリ)ミサイル・エンジンテスト施設を解体する意向を示した。その意向は9月19日の南北の9月平壌共同宣言の中に「東倉里エンジン試験場とロケット発射台を関係国専門家の参観のもとで永久的に廃棄する」と明記して再確認されている[注6]。また、シンガポール共同声明で約束した「米兵の遺骨回収と返還」に関しては、北朝鮮は7月27日の停戦協定25周年の日に、すでに回収されている遺骨55柱を返還した。
 さらに9月平壌共同宣言において、北朝鮮は「米国が米朝共同声明の精神に沿い、相応の措置を取れば、寧(ニョン)辺(ビョン)の核施設を永久廃棄するなど追加措置を講じてゆく用意がある」と、米国側の意思があれば信頼醸成措置の追加に応じる意思があることも明記した。   
 このように、北朝鮮は積極的に信頼醸成のための努力を続けた。言葉だけではなく実際行動を起こしたのみならず、継続的な追加措置を相互にとりながら信頼を積み重ねる提案も行ってきた。
 それに対して、米国が信頼醸成のために何をしてきただろうか?米国がとった行動は、トランプが約束した大型の米韓合同軍事演習の延期と縮小のみであった。このような経過を踏まえるならば、バイデン政権がシンガポール共同声明を基礎にして新しい米朝関係を築くためには、米国がまず北朝鮮の行動に見合う信頼醸成の行動を起こす番であることは、誰の目にも明らかであろう。
 
 ハノイ会談で米国がオール・オア・ナッシングの姿勢を示し、会談が失敗に終わったのち、北朝鮮は米国の北朝鮮敵視政策の撤回がない限り米朝交渉が実りあるものにならないとの判断を示すようになった。相手に信頼醸成を積み重ねる意思がないのは、北朝鮮への敵視政策に変更がないからであろう、との判断である。北朝鮮のこの「見限り状態」が現在も続いていると考えられる。アメリカが信頼醸成の回復の第一歩として今とるべき行動を考えるために、この経過を振り返っておく。

 ハノイ会談ののち北朝鮮は、2019年中に「新しい計算法」による提案をもって交渉に臨むよう期限を設けて米国からの回答を待った。そして米国からの回答がない状態で、年末に4日間をかけた第7期中央委員会第5回総会を開催した。そこにおいて北朝鮮は、米国を次のように評価した[注7]。
 「アメリカの本心は、対話と協商の看板を掲げて、のらりくらりして自分の政治外交的利益をはかると同時に、制裁を引き続き維持して、われわれの力を次第に消耗、弱化させることである」
 「核問題でなくても、米国は他の何かを標的にして、我々に手出しするであろうし、アメリカの軍事的・政治的威嚇が終わることはないでしょう」
 このように述べたうえで、敵視政策の撤回についての次のように述べた。
 「アメリカが対北朝鮮敵視政策をあくまで追求するならば朝鮮半島の非核化は永遠にありえない…、アメリカの対北朝鮮敵視が撤回され、朝鮮半島に恒久的で、かつ揺るぎない平和体制が構築されるまで、国家の安全のための必須かつ必要不可欠な戦略兵器の開発を中断することなく開発を続ける…」
 つまり、非核化の要件として米国の敵視政策の撤回が強調されている。約1年後の今年1月に開かれた第8回朝鮮労働党大会においても、アメリカの敵視政策の継続が批判されたが、そのときはその撤回を「新しい朝米関係のキーポイント」と指摘した[注8]。
 「アメリカで誰が権力の座についてもアメリカという実体と対朝鮮政策の本心は絶対に変わらない」
 「新しい朝米関係樹立のキーポイントは、アメリカが対朝鮮敵視政策を撤回するところにあるとし、今後も力対力、善意対善意の原則に基づいてアメリカに対するであろう」
 バイデン政権が北朝鮮政府との接触を試みたことに対して、2021年3月17日、北朝鮮の崔(チェ)善(ソン)姫(ヒ)第1外務次官は「米国の対朝鮮敵視政策が撤回されない限り、いかなる朝米接触や対話も行われないという立場」を改めて表明し、「力には力、善意には善意の原則に基づいて米国に対する」という北朝鮮の方針を再確認している[注9]。

 ハノイ会談以後、北朝鮮はこのように米国の敵視政策に照準を合わせて、対米関係を論じ、行動してきた。

 敵視政策とは何か、敵視政策の撤回とは何かを具体的に定義することは簡単ではない。しかし、これまで述べてきた最近の経過から明らかに言えることは、米国の「対朝鮮敵視政策」とは、米朝相互の不信を払拭し信頼醸成を積み重ねる努力を示さない米国の一方的政策全体をさす言葉なのである。しかがって、敵視政策の実体を一挙に撤回できるようなものではない。しかし、それと同時に、撤回へのシグナルは様々な方法によって発することが可能である。
 その意味で、行動をとるべき順番にある米国のバイデン政権は、まず「敵視しない意図と信頼醸成の積み重ねの必要性についての立場表明を行う」ことが重要であろう。それはそれほどハードルが高い話ではない。2000年10月、クリントン政権の時代に北朝鮮の趙(チョ)明録(ミョンロク)国防委第1副委員長(当時)が金正日国防委員長(当時)の特使としてワシントンを訪問した際、米朝両政府は互いに敵意を抱かないことなどを宣言した共同コミュニケを発表している。その内容を再確認すればよい。
 「…両国は2国間関係において新たな方針をとる準備ができていると宣言した。重要な第一歩として、両国は、いずれの側の政府も相手に対して敵対的意図をもたないと述べ、過去の敵意から自由になった新しい関係を築くために今後あらゆる努力を払うと誓約した。」[注10]。
 その上で、バイデン政権は、米韓合同軍事演習の中止、朝鮮戦争の終戦宣言、平壌への米連絡事務所の設置、制裁の緩和など、信頼関係構築のための具体的な提案をするべきである。

 このような米国の行動は、急がなければならない。現在は、米朝の相互不信と敵対関係が続く中で毎日が過ぎている。停戦が長らく維持されているとはいえ、朝鮮戦争は正式には終結せずに継続している。米韓の側も北朝鮮の側も、軍事演習、軍備の増強と近代化を正当化する理由に事欠かない。8月には米韓合同軍事演習が予定されている。とりわけ、米国と韓国においては議会における政権野党と国民世論への対応というリスクも抱えている。心配されるのは、朝鮮半島の緊張が再び高まることである。バイデン政権の行動が遅れれば遅れるだけ、不信の悪循環が再発するリスクが増すであろう。一日も早い米国の行動が求められており、バイデン政権の対応が急がれる。(前川大、梅林宏道)


注1 米大統領官邸(ホワイトハウス)、“Press Gaggle by Press Secretary Jen Psaki Aboard Air Force One En Route Philadelphia, PA”、2021年4月30日。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/04/30/press-gaggle-by-press-secretary-jen-psaki-aboard-air-force-one-en-route-philadelphia-pa/

注2 米韓首脳共同声明(2021年5月21日)。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/05/21/u-s-rok-leaders-joint-statement/

注3 板門店宣言(2018年4月27日)。

https://english1.president.go.kr/BriefingSpeeches/Speeches/32(英文)

注4 シンガポール米朝首脳共同声明(2018年6月12日)。

https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/joint-statement-president-donald-j-trump-united-states-america-chairman-kim-jong-un-democratic-peoples-republic-korea-singapore-summit/

注5 例えば、「朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会が行われる」(“Report on 5th Plenary Meeting of 7th C.C., WPK”、『朝鮮中央通信』英語版、2020年1月1日)や、「金与正党第1副部長の談話」(“Press Statement by Kim Yo Jong, First Vice Department Director of Central Committee of Workers' Party of Korea”、『朝鮮中央通信』英語版、2020年7月10日)。

いずれも、http://www.kcna.co.jp/index-e.htmから日付で検索。

注6 9月平壌共同宣言(2018年9月19日)(英語)。

https://english1.president.go.kr/BriefingSpeeches/Briefings/322

日本語訳:ピースデポ・アルマナック刊行委員会『ピース・アルマナック2020』(緑風出版、2020年7月10日)、139ページ。

注7 「朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会が行われる」(“Report on 5th Plenary Meeting of 7th C.C. WPK”、『朝鮮中央通信』英語版、2020年1月1日)。

http://www.kcna.co.jp/index-e.htmから日付で検索。

注8 “Great Programme for Struggle Leading Korean-style Socialist Construction to Fresh Victory”、『朝鮮中央通信』英語版、2021年1月9日。

http://www.kcna.co.jp/index-e.htmから日付で検索。

注9 「崔善姫外務第1次官が談話を発表」(“Statement of First Vice Foreign Minister of DPRK”、『朝鮮中央通信』英語版、2021年3月18日)。 http://www.kcna.co.jp/index-e.htmから日付で検索。

注10 米朝共同コミュニケ(2000年10月12日)。

https://1997-2001.state.gov/regions/eap/001012_usdprk_jointcom.html


2021/04/27

監視報告 No.31

   監視報告 No.31  2021年4月26日


§ バイデン政権が進める北朝鮮政策に関する日本と韓国との協議では、各国の主体的な北東アジアへの地域ビジョンが問われている。


2021年1月20日、バイデン政権が始動した。発足して数か月だが、今のところ、バイデン政権は、米国は朝鮮民主主義人民共和国(DPRK、北朝鮮)の安全を保証し、DPRKは朝鮮半島の完全な非核化のために努力し、新しい米朝関係の確立と永続的な朝鮮半島の平和体制の構築を相互に約束した、2018年6月の米朝首脳会談のシンガポール合意の内容を、今後の米朝交渉の基礎として継承するかどうかは分からない。しかし、バイデン政権が北朝鮮問題を重視し、無視ではなく何らかの関与政策をとり、政策方針の選択に当たっては日韓両政府と協議していこうとしている方針であることは、その後の発言や発表文書などからうかがえる。

ブリンケン国務長官は、2月1日に放映されたMSNBCテレビの番組において、北朝鮮の核問題は「政権が変わっても悪化し続けてきた問題であることを認めるところから始めたい」とし、民主党、共和党を超えて今までの米国政府の外交が効果を上げていないと自認した。そして、バイデン大統領から「朝鮮半島の非核化を前進させるために最も効果的な方策を取るために政策を見直すよう頼まれた」と語った[注1]。さらに、それは同盟国と共に進めると表明している。ブリンケンは1月19日の承認聴聞会で、北朝鮮問題について「同盟国とパートナー国、特に韓国や日本などと緊密に相談し、すべてのオプションを調べてみることからはじめる」と述べた[注2]。事実、2月19日、日米韓は朝鮮半島の完全な非核化のための局長級の協議をオンラインで開き、協力を深めることで合意した。

韓国と日本との協議を重視するバイデン政権の基本姿勢は一見当然のことのように見える。しかし、協議する目的は何かという問いに対する答えは必ずしも自明ではない。現実問題において、韓国と日本における現政権の対北朝鮮政策には根本的な違いがある。とりわけ、2018年に訪れた非核化と平和に向かう朝鮮半島情勢に対して、日本政府は積極的に関与するプレヤーとしての主体性すら持ち得ていない。米国と韓国が紛れもなく2018年以後の変化の重要な当事者であるなかで、米新政権が日本と韓国の両政府と連携することの意味は何なのか、それが本エッセイの関心事である。


文在寅政権の米政権への期待

韓国の文在寅大統領はよく知られるように2018年以来の南北関係と米朝関係の新たな進展に大きく貢献してきた。とりわけ文にとって1953年からの停戦体制に代わる平和体制の構築は不動の目標であった。

バイデン政権に対しても、文は米朝首脳会談で得られたシンガポール合意を今後の米朝対話の出発点にしてほしいと考えている。21年1月18日、文は大統領府春秋館で開かれた年頭記者会見で、「バイデン政権の発足により朝米対話、南北対話を新たに始める転機が設けられたと思う」とし、「その対話はトランプ政権で成し遂げた成果を継承し、発展させていくものでなければならない」と述べた[注3]。

さらに、バイデン政権が発足した1月20日、文在寅は2018年に特使として北朝鮮を訪問し、シンガポール米朝首脳会談の準備をした鄭義溶(チョンウィヨン)を新しい外相に任命した。

3月18日、米韓外務・防衛閣僚会議「2プラス2」後に行われた共同記者会見において、鄭は、記者からの「米国はシンガポール合意を尊重すべきだと思うか」との質問に対し、「シンガポール合意は真剣に考慮される必要があるものであるが、韓国政府の観点からは、米朝関係を解決し、朝鮮半島に平和を確立し、非核化するための基本原則を確認するものである[注4]」と述べ、米国務長官が同席する場で米国への要請となるような発言を避けつつもシンガポール合意の本質的重要性を強調した。


無策のままの日本政府

日本政府は米朝のシンガポール合意を方向性は正しいものとして評価した[注5]ものの、実際には、国連安保理の制裁圧力の継続を重視し、「核兵器の放棄が先で、制裁解除は後」との立場を続けている。トランプ大統領の補佐官(安全保障担当)であったボルトンの回顧録によれば、安倍前首相はシンガポール会談前にトランプ大統領に対して金正恩委員長(当時)を信じないよう忠告し、米朝会談の進展を妨害したとされる[注6]。

2020年9月に発足した菅政権においてもこの制裁一辺倒の姿勢は変わらない[注7]。1月13日の年頭記者会見で、菅首相は「日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して、北朝鮮と国交正常化を目指す」と述べ、従来の考えを繰り返した[注8]。バイデン政権発足後の日本政府の姿勢もこの延長上にあると考えて間違いない。3月16日の日米安全保障協議委員会(「2+2」)後の記者会見において、茂木外相は「北朝鮮の完全な非核化の実現に向けて、国連安保理決議の完全な履行の重要性を確認し、日米及び日米韓三か国で引き続き協力していくことを確認した」と述べたが、この内容は相も変らぬ従来と同じ内容の繰り返しである[注9]。

実際には、日本政府はこのような公的な政策表明の背後で、より踏み込んだ後ろ向きの政策を追求している可能性がある。1月22日の自民党外交部会において外務省幹部は「日本は段階的アプローチを認めていない。(バイデン政権への)働き掛けを強化する」と述べたことが報じられた[注10]。この発言は、歴史上前例がないと言われる制裁を維持し続けることによって、北朝鮮が制裁に屈服して一挙に核兵器を放棄することを日本政府が目指していることをうかがわせる。さらに、一部の報道でバイデン政権はトランプ政権とは違って北朝鮮の段階的非核化の政策をとる可能性があると報じられていることに対して、そのような方針に抵抗する意向を示している。日本政府は、いわゆるリビア方式では一歩も前に進まなかった過去の非核化交渉の歴史から学ぶことなく、未だに圧力の効果という幻想を追っているようにみえる。3月30日、4月で期限が切れる北朝鮮に対する日本の独自制裁措置について、日本政府は2年間延長することを決定した[注11]。


「2+2」協議に現れた困難

このように韓国と日本の間には現在の対北朝鮮政策に大きな違いがある。韓国の文政権はシンガポール合意の履行を基礎に米朝交渉の再開を目指している。日本は対北朝鮮敵視に近い政策を保持し圧力に重点を置いている。バイデン政権は北朝鮮政策を策定するにあたって、この両者との協議を重視するというのである。そこから予想されるバイデン政権が直面するであろう困難は、早速、米韓、日米の「2+2」共同文書に現れている。

バイデン政権は、対中国戦略を重視する結果として、防衛・外交トップの直接会談の最初の訪問先を日本と韓国に選んだ。その結果、日米「2+2」会談(3月16日、東京)と韓米「2+2」会談(3月18日、ソウル)が相次いて行われ、それぞれの共同声明が発表された。そこには、当然、北朝鮮問題についての言及がある。

2つの「2+2」共同声明は、北朝鮮問題について際立って異なるメッセージを含んでいる。

日米共同声明においては、両国は北朝鮮を刺激する敵対的とも言える表現を用いた。日米共同声明に含まれている「北朝鮮の軍備(arsenal)が国際の平和と安定に対する脅威である」という文言は極めて挑発的である。核兵器に限らず北朝鮮のあらゆる軍備を国際的な脅威だというのは、かつてない乱暴な表現である。また、日米共同声明は「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認した。」[注12]これは、韓国政府が、南北首脳宣言や米朝首脳共同声明で約束しているのは「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」であると述べてきた敏感な問題を無視した文言を敢えて使ったものである。

それに対して、米韓共同声明は、韓国には米国の核兵器は存在しないという米韓の共通の事実認識を前提としつつ、北朝鮮への配慮をにじませた表現に終始している。米韓は、共同声明において「北朝鮮の非核化」という文言は使わず「北朝鮮の核・弾道ミサイル問題が最大の優先課題だ」と述べて「問題を課題とする」という表現に留めたのみならず、韓国への米国の「核の傘」に直接言及することを避けた。つまり「米国側は、韓国の防衛とすべての範囲の能力を用いた拡大抑止の約束を再確認した」と、拡大抑止の内容における核兵器の要素を明記することを避けた[注13]。因みに、2日前の日米共同声明においては、同じ文脈において「核兵器を含むすべての範囲の能力」と核兵器を明記した。また、昨年10月の米国防長官と韓国防衛大臣の共同声明[注14]においても核兵器を明記して拡大抑止力の要素を述べていた。今回、「核」の文字を外したのはバイデン政権下の米朝関係の良好なスタートを願う韓国側の意向が働いたのであろう。


米・韓・日協議の意味

2つの共同声明に現れているように、バイデン政権が北朝鮮政策を検討するために同盟国と協議する場合、日本と韓国が与える影響の方向はほとんど正反対であると言っても過言でないであろう。

バイデン政権による北朝鮮政策の見直しが、すでに述べられているように「朝鮮半島の非核化を前進させる最も効果的な方法」を目指す[注15]ものであるとすれば、少なくとも北朝鮮の関与を継続させる方向での検討が必要であり、長期的な履行スケジュールを念頭に置く必要がある。短期解決は想定できない。そのような努力における実質的な内容において、現在の日本政府が果たしうる貢献はほとんどないであろう。むしろ緊張を高め情勢を悪化させるリスクを孕んでいる。一方で、韓国は2018年板門店宣言の実現という課題に挑戦している。韓国は、いわば米国が解くべき同じ問題の一部の独立した当事者である。韓国との協議で米国が得られる実質的な貢献は極めて大きいであろう。

この局面は、1999年におけるウィリアム・ペリー朝鮮半島問題特使(元国防長官)による政策見直しの局面を想起させる。ペリーは、1994年米朝枠組み合意・KEDO(朝鮮半島エネルギー開発機構)プロセスを継続すべきか否かの包括的政策レビューをクリントン大統領に命じられた。そのときペリーは日本と韓国との協議を重視した。ペリーは日韓がまったく違った懸念を抱いていたと次のように回想録で述べている[注16]。

「韓国の金大中大統領は、私の北朝鮮政策レビューが進行中の太陽政策を壊すのではないかと心配し、日本の小渕恵三首相は、私の政策レビューが日本の最大の関心事である拉致問題を無視するのではないかと心配した…」

その後の歴史は、韓国との協議が政策見直しに大きく貢献したことを示しているが、日本の貢献の影はない。


しかし、にもかかわらず、米国が日、韓と北朝鮮政策について協議を行うことは朝鮮半島と北東アジアの平和と安定にとって極めて重要である。それはしばしば言われるような、米韓日の団結が北朝鮮に対する交渉圧力を強めるという理由からではない。北朝鮮にとっては、現に現れる米国の対北朝鮮政策が評価の対象となるすべてであると言っても過言ではないだろう。米国の北朝鮮政策が韓国、日本との了解のもとに進められることは、韓国、日本、米国それぞれが朝鮮半島問題に持続的に取り組むために不可欠な要件なのである。

韓国政府にとっては言うまでもなく韓国自身の板門店宣言の履行の義務があり、米国との調整は不可欠である。日本政府にとっては、米国から常に相談を受けているという事実そのものが、日本政府の本音に反する方向に交渉の進展があったときにも政府が保守勢力を納得させる材料になり、さらには、世論が現在以上に情勢好転の足を引っ張る方向に傾くことを日本政府が抑制しようとする誘因となるであろう。それが、望むらくは、日本政府が現在の無策をのり超えて、より主体的な関与を促す世論形成の前提的土台となる。米政府自身にとっては、北朝鮮政策の策定と実行は朝鮮戦争の終結問題を含む北東アジアの安保政策全体を視野に入れざるを得ない課題である。その持続可能な解決には必然的に中国を含む地域的な視野における取組が必要になる。したがって、それぞれが独自の事情を抱えて対中関係を追求しなければならない日本と韓国という同盟国との政策調整は不可欠である。逆に、この事実は、日本と韓国においても、同様な地域的視野をもって対米交渉に臨まなければならないことを意味している。

北朝鮮政策に関する米・韓・日の協議とは、それぞれが中国と北朝鮮を含む北東アジアの非核・平和に関する主体的なビジョンをもって協議に臨む場とならなければならない。(ドゥブルー達郎、湯浅一郎、梅林宏道)


注1 『国務長官アントニー・ブリンケンとMSNBCのアンドレア・ミッチェル』、米国務省、

2021年2月1日。

https://www.state.gov/secretary-antony-j-blinken-with-andrea-mitchell-of-msnbc-andrea-mitchell-reports/  

注2 「国務省長官候補アントニー・ブリンケンが指名承認公聴会で証言」、『PBSNEWSHOUR』、2021年1月19日。

https://www.pbs.org/newshour/politics/watch-live-senate-committee-on-foreign-relations-holds-confirmation-hearing-for-antony-blinken

注3 「文大統領『朝米対話はシンガポール宣言から再始動すべき』」、『ハンギョレ』、 2021年1月19日。 https://news.yahoo.co.jp/articles/19bc8a9aa39f40d084494ffa189240022c705518

注4 「国防長官ロイド・オースティンと国務長官アントニー・ブリンケンが米韓の外交・防衛「2+2」協議会の後、韓国のカウンターパートと記者会見を開く」、米国防総省、2021年3月18日。  https://www.defense.gov/Newsroom/Transcripts/Transcript/Article/2541299/secretary-of-defense-lloyd-j-austin-iii-and-secretary-of-state-antony-blinken-c/  

注5 「『北朝鮮めぐる懸案解決に向けた一歩と支持』安倍首相」、『NHK』、2018年6月12日。

https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/5455.html

注6 ジョン・ボルトン「ジョン・ボルトン回顧録 トランプ大統領との453日」(朝日新聞出版、2020年10月7日)。

注7 最近の安倍、菅政権の北朝鮮政策が『監視報告No.28』において論じられている。 梅林宏道、湯浅一郎「「条件を付けずに首脳会談を目指す」日本政府の北朝鮮政策には、首尾一貫した政策メッセージと平壌宣言の正しい理解が不可欠である」、2021年1月13日。

注8 『新型コロナウイルス感染症に関する菅内閣総理大臣記者会見』、首相官邸、2021年1月13日。

http://www.kantei.go.jp/jp/99_suga/statement/2021/0113kaiken.html 

注9 「日米安全保障協議委員会(「2+2」)共同記者会見」、外務省、2021年3月16日。https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/page3_003036.html

注10 「日本、段階的非核化を警戒 米新政権の対北朝鮮政策」、『産経新聞』、2021年1月22日。 

https://www.sankei.com/politics/news/210122/plt2101220031-n1.html

注11 「北朝鮮に対する日本独自の制裁措置 2年間延長へ」、『NHK』、2021年3月30日。  https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210330/k10012944431000.html

注12 「日米共同記者声明」、米国務省、2021年3月16日。

https://www.state.gov/u-s-japan-joint-press-statement/

注13 「2021米韓外交・防衛「2+2」共同声明」、米国務省、2021年3月18日。 https://www.state.gov/joint-statement-of-the-2021-republic-of-korea-united-states-foreign-and-defense-ministerial-meeting-22/

注14 「第52回米韓安保協議会議の共同コミュニケ」、米国防総省、2020年10月14日。

https://www.defense.gov/Newsroom/Releases/Release/Article/2381879/joint-communique-of-the-52nd-us-republic-of-korea-security-consultative-meeting/

注15 注1と同じ。

注16 William J. Perry, “My Journey at the Nuclear Brink,” Stanford University Press, 2015


監視報告 No.36

  監視報告 No.36   2022年12月26日 § 米韓合同軍事演習の中止表明が緊張緩和への第一歩となる    朝鮮半島の緊張緩和が求められている。  米韓合同演習は在日米軍・自衛隊を巻き込んでエスカレートし、朝鮮人民民主主義共和国( DPRK 、北朝鮮)は核戦力政策法を制...